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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の1:勧誘
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といって避けていたり、或いは解れていたりといった破損は見られない。しかし歳月と習慣のお陰か、元々は漆黒であったであろう服は色褪せて灰色の斑点を浮かせており、或いは裾の部分がよれていたりしている。確かに新調の必要はありそうだが、ユミルの視点かれ言えばもう暫くは使用できそうな服であった。

「そんで、御主人。御主人はどうなさるんです、これから」
「・・・これからか」
「そうそう。あの夜依頼ずっと無口で、ほとんど口を利いてくれなかったじゃないですか。だからそろそろ何か言って貰わないと寂しいんですよ」
「・・・ふむ・・・」

 葡萄酒の薫りをぐっと喉へ通しながら、ユミルは酒気を常態化させていた脳味噌で思う。酒に食事に溺れていた生活のためか、実にゆっくりとした口調で言う。

「・・・あの夜、久方ぶりの生きているという実感が沸いた感じがしたな・・・。狩人として生活するのもいいが、いっそそっちの方向へ進んで見るのも悪くは無いか・・・?」
「ははっ、なら私と同じ稼業にでも足を突っ込みますか?各地の財宝財貨を探り当てて、全部自分のものにしていくんですっ。綺麗な女性も煌びやかな宝石も全部独占。宝箱に金貨や宝石を詰め込んだり、色んな美酒を飲んだり出来るんです。浪漫があるでしょ?・・・あ、店主、私にも葡萄酒を!」

 手を颯爽と挙げて希望したパウリナに店主は直ぐに頷き、ゴブレットに紫紺の泉水を注いでいく。ユミルはすっかりと重みを失くした杯を傾けたり、撫でたりしながら静かに答える。

「・・・それも面白いかもしれないな」
「そうでしょ?目標に向かってまっしぐらに進んでいく!御主人にピッタリかもしれませんよ。あ、人からものを盗るっていう意味じゃありませんよ?ひっそりと何処かに眠っている、手付かずの宝をゲットするって意味です。遺跡からだったり、ね。あれ、こういうのって盗賊の仕事なのかな?もっと別の名前があったような・・・」
「冒険家、だろ?」
「そうそう、そっち!私もそろそろ踏ん切りつけようかって思っていた頃なんです。やっぱり人から物を盗るなんて、足が着き易いですからね。バレたら地獄、バレなくても地獄ですよ。だから一緒に如何です?冒険稼業に転職しませんか?」
「いいぞ、やろう」
「よぉーっしその意気・・・えっ、嘘、やんの?」
「ほら、酒だ」

 目をぱちくりとさせたアリッサの目の前に、店主はぶっきらぼうにどんとゴブレットを置いた。慌てて紫紺の滴が零れぬよう足を押さえたパウリナは、縁からつつと流れてしまった滴を舐め取りながら酒をぐびぐびと、まるで麦酒か何かのように飲み込んでいった。ユミルは顎に手を当てて、呆れの混じった口調で言う。

「お前から誘っておいて、何故驚く?」
「あ、いや・・・こういうのもなんですけど・・・つい昨日まで気が抜けた麦
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