第十話
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男性がいた。高城の親父さんの演説は、<奴ら>となった男は友であり、救助活動の最中にかまれて<奴ら>となったと人々に説明する。
<奴ら>と化したかつての友を檻からだす。そして、高城の親父さんは<奴ら>の仲間となってしまったかつての友を自らの手で、日本刀で一刀両断して、処刑した。
その処刑の一部始終を、俺達は最後まで見た。タカトさんは、娘には刺激が強い事を判断して、首を跳ねるシーンを見せないようにしていた。
「……これこそが、我々のいまのだ!!素晴らしい友、愛する家族、恋人だったものでも、ためらわずに倒さねばならない!!生き残りたくば……戦え!!」
そうして演説は締めくくられる。だが、そのかつての友を<奴ら>と化しても躊躇なく首を跳ねる光景と、現在の状況を分からせる一つ一つの信念が籠った言葉に、人々は何を思ったのだろうか?
あるものは、現実を拒否するのか?それともより一層に覚悟を決めるのか?捉え方は様々だろうが、それでもまだ、人々は立ち尽くしている。高城の親父さんの言葉を他の人が言っても現実味は薄いが、あの人が言うからこそ、現実味のある言葉に昇華される。
だからこそ、立ち尽くして誰も彼もが考えているのだ。あの人が言った事は現実だと……中には現実を否定する人間もいるだろうが、それでも印象に残った演説であることには変わりはない。
高城の親父さんの言葉には、俺もある意味考えさせられる。俺も生き残りたい一心で、銃を取り<奴ら>と対峙して、必要であれば生きた人間も殺した。生き残る為に仕方がないと割り切ってはいるが、果たして俺はどっちが自分の本心なのか分からない。
生き残りたいと思う気持ちは強いのも事実だが、この狂った世界を楽しんでいるのもまた事実だ。いつ死ぬか分からないこの殺伐とした世界を、俺は楽しんでいるのだ。デスバレットの能力を受け継いで、その高い技能を生かせる環境に身を置いた自分に酔いしれているのだ。
だからこそわからない。俺の本心はいったい……どっち何だと。
「田中先輩もそう思いますよね!!」
お、何か平野が必死な形相でこっちを見て訴えてくる。少し自分の世界に入り込んでいたから話を聞いてなかったわ。
「刀や木刀といった近接武器は効率が悪いですよね!」
「状況によるだろ。<奴ら>が相手の場合は特に……」
俺の言葉に平野は言葉を詰まらせる。話を聞いてなかったから状況をあんまり理解してないが、どうやら武器の優劣に対する話のようだな。
「昨日みたいな戦闘なら銃は確かに効率的だけど、歩いて行動する場合は<奴ら>と遭遇して撃っての連続だと<奴ら>に囲まれて食われるのがオチだな。状況によっては刀や木刀が良い場合もある……まあ、要するに。武器の優劣なんて関係ないし、人によっては得
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