もう一人の転生者
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寧ろ現実の理解が追い付いてない。この世界は現実だ。怪我をすれば死にもする。
原作キャラなんて者もなく、ただそこにあるのはひとつの命だ。
原作がどうのとかキャラの悪影響だとか、この世界の管理者にでもなったつもりかよ?」
「残念だ…」
「っ!?」
”ガキィンッ!”
いきなり消えたと思ったら、男は俺の後ろに回り、ショートブレードを振りかぶっていた。
間一髪で防御し、その場から飛び退く。
「テメェ…」
「ふむ、止められるとは思わなかったが…」
「ソレ何処から出した」
「………そこかね?」
見ただけでわかる。コイツは紛れもなく強者だ。
立ちずまいから先程の太刀筋。努力してきた経歴も長く感じ取れる。
「その剣…フランヴェルジュか。
神の特典はテイルズ系統と言ったところか」
「っ!?」
コイツ、この剣のことを知っている?
「何を驚いているのかね?私のこの姿を見て、これから私が何をするかなぞ想像に容易いだろう」
「お前なんか知るか!つーか、そのしゃべり方一々ウザいぞ!」
「私は君と話していると頭痛がしてくるよ。トレース・オン」
そう言うが早いか、男の手には俺の持つフランヴェルジュと全く同じものが握られていた。
「何…だと…!」
「本当に知らなかったか。
私は対象となるものが剣の類いであるのなら、確実に複製し、貯蔵することができる。
君の持つ剣もまた、その対象だったにすぎない」
「マジかよ…何つー鍛冶師泣かせなスキルだよ…」
「残念ながらこれはスキルでなく特典だよ。
とはいえ、その剣は何らかのエンチャントが付加されている…流石にそこまでは到達できないか」
確かにアイツのフランヴェルジュには俺の様に炎がまとわりついていない。
そして、今わかった。
コイツはまだ、この世界に来たばかりだ。
恐らく恩恵も刻んでいない…けど、恩恵なしであの動きが出来るのであれば、脅威以外何者でもない。
「では、始めようk「うわぁぁぁぁあぁあ!」何だ!?」
「ベル!?」
突如下の階層からベルの悲鳴が聞こえ、なりふり構わず走り出す。
どうやら男も同様で、俺の前を走っていた。
そしてその先で見たものは―――
「ベル様!」
ミノタウロスの角に腹部を貫かれたベルの姿だった。
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