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真犯人
3部分:第三章
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 ワトソンはいつも通りその彼に問い返した。
「太子が犯人じゃないって」
「彼の人間性からさ」
 ホームズはそれから彼が犯人ではないというのだった。
「彼のね」
「あの太子の人間性からか」
「確かに彼は今一つ冴えない人物だよ」
 それはホームズもわかっていた。太子は学生時代はいじめられていて親に逆らうことはできず優柔不断で頼りない性格である。確かに冴えない。
「しかし。善良な人物だよ」
「そういえば慈善活動に積極的だったね」
「平和主義者で人種差別にもかなり否定的だ」
 これはあまり言われていないことである。太子は少なくとも残忍な人物でも暴虐な人物でもない。むしろそれと正反対なのである。
「趣味は薔薇の栽培で。周りに対しても親切なんだよ」
「そういう人物がか」
「実は太子にも会ったし見たこともあるんだよ」
 ホームズはこのことも話した。
「その目も雰囲気も。とても人を殺すものじゃない」
「そうか」
「彼は人を殺してまで何かをするような人ではないよ」
 ホームズは言った。

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