暁 〜小説投稿サイト〜
幸福の十分条件
映し出されたもの
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的に、俺がやるのはこういう誰でもできる作業になるわけだ。
 他にはこの組織で支給している汎用装備の手入れなどもあったが、銃弾を入れる作業が作業時間の大半を占める。
 はっきり言って単調だ。自分が作業用ロボットだかアームだかになった気分になる。あまりにも退屈なので、手を動かしながらなにか面白いことはないかと頭の中で探す。すると、最近、日に日に蒼麻と怜司の仲が怪しくなっていっていることを発見した、というどうでもいいことを思い出した。本当にどうでもいい。よりにもよって思い出すことがこれとは、自分で自分に呆れる。
 さらに記憶を掘り下げていっても、以前に怜司がなんかの病気になったとかで、十兵衛が奮闘したこととかしか出てこない。ここ一ヶ月にあった大きな事件といえばこの二つぐらいだ。
 どうにも怜司のやつは順調に周囲の女たちを攻略していっているようだ。十兵衛はこの事件以来、少し怜司に優しくなった気がする。もともと優しくはあったが、それはどこか従者的だった。今はもっと違う接し方になっているように思う。蒼麻は蒼麻で、こっちはついに本格的に互いを意識するようになっていた。夏とかによくやっている、感動恋愛映画を見せられているような気分で、俺としては勘弁してもらいたかったが。
 一方で俺にあったことといえば、こうやって夜中に作業をして昼間に起きるようになったことぐらいだった。リア充と引きこもりの違い、といったところか。
 苛つきが手元を狂わせたのか、置いてあったマガジンを手の甲で弾き飛ばしてしまう。それが机の上に置いておいたナイフにぶつかって、ナイフが床に落下。危うく足に突き刺さるところで、遅れて俺の額から冷や汗が流れ落ちる。ピタゴラスイッチかよ。
 慎重にナイフを拾い上げて机の上に戻す。これは手入れするために置いてあるわけではなくて、俺の所持品だ。一応、ここは傭兵集団のアジトなので、敵が侵入してくるかもしれない、と言われて持たされたのだ。俺のような素人がこんなナイフを一本持ったぐらいで役に立つとは思えないが、お守りぐらいにはなるのでこうして持ってきている。たったいま、それで怪我しかけたが。
 深呼吸をして自分を落ち着かせてから、作業に戻る。銃弾の山と空マガジンの群れが、俺をまだ待ち構えていた。
 ──俺は無意識に、ここ最近の流れから連想される、ある考えを頭の中から排除しようとしていた。それから、目を背けようとしていたのだ。


 次の日。夕食どきになったので部屋から通路に出たところで、怜司と桜が会話をしているところを見かけた。
 この二人が、二人だけで話しているのを見るのは珍しい。なんとなく気になって、俺は聞き耳を立ててみた。だが、内容はいたって普通の世間話で、これといって面白くもなかった。
 せっかくだから後で桜に、なにを話していたのかでも聞いてみ
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