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第一章
食事の秘密
統一される前のドイツである。
その一方のドイツである東ドイツの首都東ベルリンのあるビルの中でだ。彼等が話をしていた。
「それではだ」
「はい」
スマートな長身の男が自分の前に座っている鼻の高い男に応えた。
まるで映画俳優の如き整った顔をしている。彫の深い顔立ちに青く澄んだ瞳、そして見事な金髪を後ろに撫で付けている。スーツも端整に着こなしている。
その彼がだ。その鼻の高い男の言葉に応えたのである。
「君はこれから西ベルリンに入ってもらう」
「そしてですね」
「そうだ、西側の情報を集めてもらいたい」
これが彼に告げられた言葉だった。
「よいな、同志ヘルバルト=シュナイダー中尉」
「わかりました、同志アルベルト=メルカッツ中佐」
お互いにこう呼び合うのだった。
「私は情報収集だけなのですか」
「そうだ、君はそれだけでいい」
メルカッツはこうシュナイダーに述べるのであった。
「特に工作はしなくてもいい」
「左様ですか」
「それも情報収集についてもだ」
「ついてもですか」
「そうだ、食事についてだ」
それだというのだった。
「最近西側で食事に何かをしているらしい」
「何かとは」
「わからない。だがその食事を食べてだ」
どうなるかもだ。メルカッツは話すのだった。
「かなり士気が高まっているらしい」
「将兵のですね」
「いや、将兵達だけではない」
「といいますと」
「人民達もだ」
市民とは言わないのがまさに東側である。共産圏特有の言葉だ。
「それを食べてだ。士気をあげているらしい」
「そしてそれによって働きですか」
「かなり国力をあげているようだ」
「妙な話ですね」
それを利いてだった。シュナイダーは言うのだった。
「確かに食事により英気は養えますが」
「そうだ。それで君は西ベルリンに入りだ」
「食事について調べよと」
「そうしてくれ」
メルカッツはまた言った。
「ではな」
「はい、わかりました」
シュナイダーは敬礼をして応えた。端正できびきびとした動作だった。
「そうさせてもらいます」
「頼んだぞ。今回の仕事は危険は少ないがだ」
「それでもですね」
「重要な任務だ。敵の士気に関わることだからな」
「はい、それでは」
こうしてだった。シュナイダーは身分を偽って西ベルリンに潜伏した。実は西ベルリンに入るのははじめてだ。これまでは東側の中だけでの任務ばかりだったのだ。
その西ベルリンに入るとだ。彼がまず見たものは。
「何だここは」
街の中を見てだ。呆然となるしかなかった。
立ち並ぶ高層ビルに行き交う数えきれないまでの見事な車、それに派手な服を着た人々。それ
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