アインクラッド 後編
剣煌く霧の女神
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り始める。
視界の端に表示されたバーの減衰はしかし、受けた衝撃からは考え難いほどのごく小さなものに留まった。
――逸らした!
エミは確信と共に左手を下ろすと、着地した右足のバネを使って女神の腕に跳び移る。一歩、二歩と跳ぶような歩幅で腕を走り、三歩目で踏み切る。ヴェールで隠された額に向かって跳びかかりつつ、前傾した上半身を思い切り反らす。同時に引いた右肩の上で、愛剣がジェットエンジンめいた唸りを上げる。
「やあああぁぁぁぁぁっ!!」
気合一閃。女神の頭を貫いた《ヴォーパルストライク》の紅い剣閃が、ほんの僅かだけ残っていた女神のHPを吹き飛ばした。
「わっ……とと」
落下時の空気抵抗で巻き上がりそうになったスカートの裾を両手で押さえつつエミが着地すると、蒼風を鞘に収めたマサキが相変わらずの若干不機嫌そうなポーカーフェイスでやって来た。その姿が見えるや、エミは誇らしげに胸を張る。
「どう? わたしも中々やるでしょ!」
「そういう台詞はもっと安定度を高めてから言え。危なっかしいにも程がある」
「むぅ……」
つれないなぁ、とエミは唇を尖らせるが、マサキの口調から先ほどの硬さが抜けていたのでよしとする。
「で、目当てのものはあったのか?」
そんなこちらがおかしいのか、ひどく微妙そうな顔をしてマサキが言うと、エミははっとしてウインドウを開いた。剣を鞘にしまうことすら忘れ、目を皿のようにして表示したアイテム群に目を通していく。
「――あ、あった!」
それを見つけた瞬間、エミはいつもより数音高い声を発した。隣のマサキとウインドウの間で何度か視線を往復させると、今度は慎重に、丁寧にタップしてオブジェクト化する。
「わぁ……!」
ずしりと詰まった重みと一緒に、うっすらと青みを帯びた銀白色の塊が両手で作った皿の上に現れる。
――《プレアデス・インゴット》。それが、しっとりと濡れるような輝きを放つ金属塊の名前だった。
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