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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
剣煌く霧の女神
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ドを改めて目の当たりにしたエミの胸に、幾つかの感情が湧き上がった。憧れ、賞賛、そして――

「でも、負けてられない……!」

 ――競争心。彼の力を借りるだけなら、彼に全てを任せるだけなら、今のままだっていいだろう。でもそれでは意味がない。胸の中にしまってある想いを今度こそ伝えた後に、彼の隣に立てなければ。第一、今日は自分のインゴットを求めてきたのだ、それなのにその過程全てをマサキ一人に任せっぱなしでいいはずがない。

「っ……!」

 ぴしゃあっ! と落雷のような轟音を立てて、閃光の柱がエミのすぐ脇に着弾。ビリビリと身体を震わす衝撃に思わずバランスを崩しかけたが、今まで培ってきた気力とバランスを総動員して立て直す。同時に左へ切れ込んで、自分の持てる敏捷パラメータ全てで地面を蹴飛ばし一直線に女神へ向かう。
 幸運にもそれが最後の一発だったようで、あちこちで弾けていた閃光が消えた。エミの両目が、クリアに開けた視界で鮮明に捉える。浮遊したまま剣を突き上げる女神メローペと……そして、未だ神々しい煌きを放ち続けている巨大な剣を。

「まだだ!」

 マサキの声が頭の中で掻き鳴らされる警告音と重なった。女神の剣が放つ輝きに混じってソードスキルの薄青いエフェクトが炎のように噴き出す。両脚の回転速度が緩みそうになるのを必死で堪える。どの道、今から減速して回避したのでは間に合わない。
 代わりにエミは左腕のバックラーを頭の上で刃の向きに対して斜めに構え、思い切り右に踏み切った。
 直後、左腕に鉄パイプで殴打されたような衝撃が走った。ぎゃりぎゃりッ! と金属同士の擦れ合う嫌な音が耳をつんざき、盾から迸る火花と思しき光点が青いエフェクトに混じって宙を舞う。肺の底からうっ、と呻きが漏れるのを跳ね除けるように、エミは盾を左側に思い切り押しのけた。
 エミはSAOの初期から多くのパーティーを渡り歩いてきたが、そのパーティーがどんなスタイルのメンバーを求めているかはそれぞれ異なる。ゆえにエミは、攻撃役(ダメージディーラー)、遊撃、回避盾とこなせる役割を広げることによって様々な募集に対応してきた。エミの装備が片手に直剣、もう片手に盾を持ったごく一般的な片手剣士のものであるのも、最も初心者向きで、習熟が容易だから。そして、汎用がゆえに無理が利き、多様なスタイルに適合できるからという二つの理由のため。今エミが行ったのも、斬撃に対して盾を斜めに当てることで衝撃を受け流すというテクニックで、本来向かない盾役を何度もこなしてきたからこそ身についたものだった。
 傾きが足りなければ盾を貫通したダメージがHPを削り、傾けすぎてもまた、斬撃が逸れずにエミの半身を切り飛ばす。途轍もなく長い一瞬の後、左腕にかかる負荷がふっと消え去り、ガードを貫通したダメージがHPバーを削
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