アインクラッド 後編
剣煌く霧の女神
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ら降ってきた声にエミがはっとして顔を上げると、エミを狙い済ましたように真下に向けられた剣先が、エミの体を串刺しにせんと振り上げられていた。防御か、回避か。頭に浮かんだ二つの選択肢から、エミは即座に後者を取った。というのも、エミの持つ盾は片手剣戦士の例に漏れない小さなもので、小型モンスターならともかく大型のフロアボスが繰り出す攻撃を受け止められるほどの防御力はない。そこまでいくとタンク職の出番だ。
エミは女神の体を盾にするように両脚の間をダッシュで後方へ抜け、振り返って一気に跳躍。マサキほど敏捷値の高くないエミのジャンプでは、頭部まで跳ぼうとすると飛距離的にやや心許ない。が、最高到達点で体をやや後ろに倒すと突進技《ソニックリープ》を発動。足りない高度をスキルで強引に埋め、誰もいない床に剣を突き刺している女神の頭部を薙ぐ。
空中戦をすることになるのなら、スカートの下にスパッツを履いてくるんだった――などと少々緊張感に欠ける後悔をしながら、女神の肩を足場に剣を左腰へ引きつける。体の制御がシステムに取って代わられ、右手が水色の剣閃を残して水平に振るわれる。ヴェールの奥から女神がこちらを睨むような気配。
「っ、やぁっ!」
エミはそれを気のせいだと断じつつ、続くモーションに合わせて剣を振るった。横薙ぎから今度は縦斬り。更に身体を一回転させて再び水平斬り。最後に振り切られた腕を左上に跳ね上げてから振り下ろすと、ちょうど正方形になった剣の軌跡が一瞬だけ眩ゆく輝いて飛び散った。水平四連撃スキル、《ホリゾンタル・スクエア》だ。
「――堕ちよ」
攻撃を告げる声とエミの硬直が解けるのはほぼ同時だった。エミは躊躇なく肩の上でバックステップを行うと、くるりと一回転して着地。見上げると、一本目が半分ほどになったHPバーの上にかざされた女神の剣先が一際強く光を発した、かと思うと、そこから幾つもの光でできた剣が現れ周囲に降り注いでいく。
遠距離攻撃――!
エミは無数の剣から自分に向かってくるものを選別すると、その予想着弾地点を避けて走り出す。幸い女神から数メートルも離れれば剣の密度はさほど濃いものではなく、逃げる方向さえ間違わなければ回避、あるいは防御することは十分可能だ。とはいえ剣たちが生成される女神の頭上では殆ど避けるスペースが存在せず、この攻撃は一定数のプレイヤーが女神の頭部を攻撃することで発生するのかもしれない。
数秒間の攻撃を回避のみで凌ぎきったエミは再度女神に向かって走り出していく。
「愚かな……嗚呼、何と愚かな……!」
最後のHPバーが危険域まで落ち込んだ瞬間、女神が突然苛立ったように声を張り上げた。
「マサキ君! パターン変更あるかも!」
「解
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