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Once upon a dream〜はじまらないはじまりのものがたり〜
10月8日(水)
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「きゃっ」



 何を考えるでもなく廊下を歩いていたら、どん、と体に衝撃があって、誰かを突き飛ばしてしまった。いけない。とりあえず謝らなければ。



「ごめんなさい」



「どこ見て歩いてらっしゃるの!?―…あ」



 尻餅をついた人に手を差し出しかけて、止まる。緑のブレザーを着込んで、くるくると巻き上げた髪をツインテールにしている少女がこちらを見上げている。吊り気味の(まなじり)が、わたしをその瞳に映して燃え上がるようにきつく歪められる。



「うげ、久遠寺揚羽(くおんじあげは)



 隣で、クセっ毛をぴょこぴょこと跳ねるポニーテールに括った友美(ともみ)がそう言って、嫌そうに舌を出した。



「―…あら、これはこれは。高波海月(たかなみみずき)さんじゃありませんこと?」



 久遠寺揚羽はわたしの手を払いのけ自分で起き上がると、これ見よがしにゆっくりとした動作でスカートの埃を落とす動作をする。



「―で、謝って下さる?」



「オイ!さっき謝っただろ!?」



 わたしのかわりに血の気の多い友美が答えた。



「そうかしら?聞こえませんでした。相手に聞こえない謝罪などただの独り言と等しいとご存じないの?ちゃんと、ヒガイシャのわたくしにも聞こえるように、セイシンセイイ謝って下さるのが礼儀じゃ無くて?」



「海月、いいよ、行こ。こいつ、海月にイチャモンつけたいだけなんだから。こないだのテストで海月に負けたこと、まだ根に持ってやがるんだよ」



 友美がわたしに囁くふりをして、揚羽に聞こえるように言った。当然揚羽も黙ってはいない。



「まぁ!あれはたまたまですわ。わたくし体調が優れませんでしたもの。それで勝ったつもりでいらっしゃるなんて高波海月さんもズイブンとワイショウな方ね」



「ふーん?じゃあ言わせて貰うけど、おまえ、いつ体調が良い日があるんだろうなぁ?入学してからたッたの一度も海月に勝ててないくせに」



 それは久遠寺揚羽にはタブーだったのだろう。顔を真っ赤にさせた挙げ句、言葉も出てこないようで、ぶるぶると震えていたかと思えば、「覚えてらっしゃい!呪ってやるから!」と捨て台詞を吐いて走り去ってしまった。



「おーおー負け犬が吠えた」



 勝った友美はご機嫌だ。口笛をヒュウと吹いてからわたしの肩を抱き、ゆさゆさと揺さぶる。



「あいつもさーなんでいつもいっつも海月にからむんだか。ヒマなんだかねぇ」



「…でも、ぶつかったのはわたしのほうだから」



「え?まさか海月、久遠寺揚羽に悪いとか思ってる?むしろ踏みつぶすくらい
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