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Once upon a dream〜はじまらないはじまりのものがたり〜
10月8日(水)
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、夢の中だからかわたしは頭がぼーっとして深く考えることができない。まるで自分の体なのに自分じゃ無い人が操っているような感覚で、わたしの視界は勝手に移動し、トントンと階段を降りながら父に連れられてダイニングに来たようだ。
『おはよう、海月』。母の声がして、これまた下の部分に「母:『おはよう、海月』」と表示される。ぼけっとした頭でふとこれは便利だと思う。他人の発言を可視化できるようになれば、聞き間違いという状況は存在しなくなる。友美に聞かれたら「ホント海月ってずれてる。ツッコむとこ、そこ?」と言われそうなことを考えていると、母が次の言葉を発した。『じゃーん。今日は、豚汁です。昨日おばあちゃんからいいゴボウ貰ってね、早速お味噌汁にしてみたのですえっへん』と言った。如何にも母が言いそうなことだ。下にも当然のように「母:『じゃーん。今日は、豚汁です。昨日おばあちゃんからいいゴボウ貰ってね、早速お味噌汁にしてみたのですえっへん』」と出ている。ああ便利だな、これ。授業でも採用されないかな…授業?
「…Of course.You said so yoursekf:Once upon a dream!」
ぱちんと水泡がはじけるように、現実の音が戻ってくる。重い頭を働かせようと頑張るけれど、そうすぐには動いてくれるわけも無い。それでもようやく授業中だったことを思い出して、くっつきたがる瞼を引き離し引き離し先生を見たけれど、わたしの視界にあのピンクのワクも無ければ、先生の言ったことを文字として表してくれるあの半透明な部分も無い。ああ、便利だったのになぁ…やっぱり夢は夢かぁ。
多少残念に感じながらも、わたしは普段夢を見ることが少ないので、その時は珍しくはっきり覚えている夢をみた、というぐらいの認識だった。
そして家に辿り着く頃にはそんな夢を見たことなどすっかり忘れてしまっていた。お風呂から出たほかほかの気持ちよさで、わたしはついベッドの上で微睡んでしまった。明日の、予習、しなきゃ…まだ寝ちゃダメ…と理性が引き留めるけれど、体は眠気に引きずり込まれてゆく…。
そしてまた夢を見た。ピンクの四角い枠の左上に、10月15日(水)と出ている。確か昼間の夢も同じ場所に同じ数字が記されていた気がする。これは誰がどう見ても間違いなく日付だろうから、授業中に見た夢の続きかな、とぼんやりした頭で思った。ただ場所が違う。見慣れた家では無く、わたしは道を歩いているようだった。不意に、目の前のワクの中央にぽつん、と小さな黒猫が映った。そして、透明の部分に、初めて台詞じゃ無い言葉が出てきた。「子猫が道路に飛び出してきた!」とある。その下に、「飛び出して助ける」と、「見て見ぬ振りをする」という言葉が縦に並んでいた。わけ
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