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Once upon a dream〜はじまらないはじまりのものがたり〜
10月8日(水)
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開けた。
あ。
わたしは友美の腕を引く。友美がおよ、と言うように引かれるがままよろけて、わたしの胸にとん、とぶつかった。
その横を、のっそりと大きな影が通る。光を遮る大きなシルエットはまるで熊のようだ。友美もやっと自分が誰かにぶつかりかけたということに気がついたらしく、わたしと同じようにその人を見上げる。
彼は、ちらりと一瞬だけ、射抜くような強い眼光でわたしを見てすれ違ってゆく。
「…ひゃ〜すごい威圧感。海月ありがとね」
隣で友美が感動したようにそう言っていた。
「あいつも、顔だけ見れば王子様と言っても差し支えないんだろうけど…二年の教室に何しに来たんだろ」
「友美、知り合い?」
「えっ、まさか海月知らないの!?」
こくりと頷けば、あちゃーと大袈裟に友美は自分の手を額に当てた。
「一年の由路翔。本当に知らない?」
「えっと、ユロショウってそれ名前?本当に知らない」
「あんな有名人、いや目の保養を…ッ!」
何かよくわからないが友美は横でビッタンバッタン悶えている。
「いや、でも、海月らしいと言う他はないわ。私そんな海月が好きよ」
「ありが、とう…?ねぇ、その人って知らないと不味い?」
「ううん、全然マズくない。海月は私含む学校中の女子みたいなミーハーと違ってそのままでいて」
ぎゅっと抱きしめられたからそっと抱きしめ返す。
「海月、かわいいっ!」
「友美の方がかわいいよ…」
そんなふうにじゃれていたら授業開始の鐘が鳴ってしまった。今回の授業は英語。わたしの不得手とするところだ。日本国に産まれ、日本語にどっぷり浸かりきってしまっている身としては、どうしても英語にあまり興味が持てない。勉強だから、しかも主要五教科のうちでも重要度の高い科目だから勿論勉強自体するはするのだけれど…。
なんてことを考えていたら、いつの間にかうとうととしていたらしい。
夢を見ていた。夢の中で「これは夢だ」と自覚している奇妙な夢。
目の前に、ピンクの大きな四角のワクがある。それはまるでビデオカメラを覗き込んでいるように、わたしの視界の端から端までを覆っている。左上には、10月15日(水)と小さく表示されている。下半分は、何かシートでもかけたように少し不透明になっている。
『海月、起きなさい』と声がして、父の顔がその四角のなかに映る。同時に、その視界の不透明な部分に「父:『海月、起きなさい』」と出た。それがどういうことなのか
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