6部分:第六章
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第六章
「これでわかったな」
「はい」
「そういうことでしたら」
「それに。その寒さの方がこちらもやり易い」
ここまで語ったうえでこう述べるのであった。
「やり易い?」
「それは一体」
「この服だ」
今度は己の服装を指し示した。見ればかなりの厚着で戦場に出る程のものではないがそれでもこの季節に着るものでは到底なかった。
「その方がこの服で過ごし易いものだ」
「その服は何の為でしょうか」
従者の一人が今度はそれに問うた。
「宜しければ御答え願えませんか」
「これか」
太子はその問いもまた受けて答えるのであった。
「これも蛇への備えだ」
「蛇のですか」
「蛇の武器は何か」
そうしてまた問うのであった。
「二つあるな。それは何だ」
「一つは牙です」
これは言うまでもない。蛇が何故恐れられているのか、まずはこれであった。そうして蛇の恐怖というものはそれと必ずセットになっているのであった。
「そしてもう一つ」
「それは」
「毒だな」
太子の方からもう一つの答えを言ってきたのであった。
「そうだな」
「はい」
「その通りです」
これは従者もわかっていた。だからこそすぐに答えたのだった。
「それではその二つを防ぐ為に」
「その厚着は」
「これもな」
太子は首も見せる。そこには首全体を覆う厚いカラーがあった。それで自分の首を守っていたのであった。
「これもある」
「成程」
「そうして御自身を守っておられたのですか」
「わかったな。用心には用心が必要だ」
あらためて彼等に対して言うのであった。
「こうして私は刺客を退けた」
「この刺客を」
「この蛇を」
従者達もまた蛇を見下ろしていた。蛇は何も語らずにそこに横たわっている。死んではいない。ただそこに眠っているだけであった。太子はその蛇を見下ろして言うのであった。
「この蛇が誰に手によるものかわかるな」
「無論です」
「やはりこれは」
「そうだ、枢機卿の手によるものだ」
それはもうわかっていた。それしか有り得ない答えであった。
「さて、どうするべきか」
全てを踏まえて太子はまた言った。
「これで枢機卿は私も本気で消すつもりだとわかったわけだが」
「容赦することはありません」
彼に忠実な従者達はすぐに彼に述べるのであった。
「ここは復讐を」
「誅殺を」
それぞれの口で言う。だがそれに対して太子は首を静かに横に振るのであった。
「それはできぬ」
「どうしてですか」
「この蛇は」
「では聞こう」
太子はまた己の従者達に対して問うのであった。
「証拠はあるのか」
彼が問うのはそこであった。
「この蛇が枢機卿のものであると。その証拠はあるのは」
「証拠ですか」
「そうだ
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