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八神家の養父切嗣
十八話:救いは諦めぬ者に
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。それから……ありがとう」
Please don’t care, master.(お気になさらずに)

 何度絶望しようとも、何度でも這い上がり立ち向かう。
 そう覚悟を決め直し、なのはは再び飛び立つのだった。





 瓦礫の山を掻き分ける。バリアジャケット越しでも感じる熱に手が悲鳴を上げる。
 しかし、そんなことなどどうでもよかった。
 助けを求める手を一刻も早く掴まなければならない。
 その命が奪われる前に救い出さなければならない。
 だというのに、彼の目の前にいる者達は次々と息絶えていく。

 横たわる少年を抱え上げたが、その心臓は既に停止していた。
 瓦礫の中から人の形をした炭を拾い上げた。
 だが、ボロボロと崩れ落ちてその手の中から零れ落ちていった。
 その度に彼は声にならない悲鳴を上げて瓦礫と炎の中を駆けずり回る。
 こうまでも彼が人を救うことができないのは、彼が最も被害が大きい場所を中心に探しているからである。

 それはこんな残酷な事態を招いてしまった罪悪感と、最も近くにいた自分が迅速に救助を行えば間に合うかもしれないという希望的な観測からだった。
 ただ、人を救いたいのなら生き残りが多くいる場所を探せばいい。
 しかし、彼にはそんな選択などできなかった。以前ならば数多く救う為にそうしただろう。
 だが、今は、今だけは本当に救いたい弱者を助けようとしていた。
 皮肉なことに彼はこの瞬間は本物の正義の味方でいられた―――どこまでも歪んだ形で。

(切嗣、切嗣! 私だ、一体何があった! お前は無事なのか!?)
「誰か……誰か……いないのか? 誰も……生きていないのか?」

 ニュースでも見たのかアインスが念話を使ってくるが切嗣はそれに答える余裕すらない。
 本物の正義の味方という者は何とも情けないものだ。
 全てを救うという理想を語りながらも、結局は何一つ救えずに彷徨うことしかできない。
 
 冷酷な機械に徹すれば助けられる者も出てくるだろう。
 今も叫びかけてくるアインスに声を返すこともできるだろう。
 二人の人間を無視して四人の人間を救うという選択をすれば良いだけの話だ。
 天秤に二つを乗せ、掲げられた方を無慈悲に切り捨てればいいだけ。
 何も難しいことはない。しかし、それを行い続けた結果が、衛宮切嗣が直面した絶望だった。
 今では間違いだとハッキリと断じながらも、逃げることができない呪縛だ。

 彼は諦めた。希望から目を背けて罪を積み重ね続けた。
 絶望したのはある意味で当然の帰結だったのだろう。
 希望から目を背ければそこには最初から絶望しかないのだから。
 人は彼を冷酷な判断を下せる意志の強い人間だと褒め称えるだろう。
 だが、それは本
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