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八神家の養父切嗣
十八話:救いは諦めぬ者に
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に来ていれば助かっていたかもしれない。
 否、逆方向に行った時間があれば間違いなく間に合っていた。
 
 そんな根拠も何もない考えに取りつかれ、なのはは力を失い謝り続ける。
 誰も彼女の選択を責めることはできない。
 人命救助という観点から見れば彼女は間違ったことはしていない。
 ただ、犠牲を少なくするという観点から見た場合には彼女の行為は間違いだった。
 それだけのことだ。それでも彼女の心には後悔が泥のようにへばりついて離れない。

「私が……先にこっちに来ていたら……あっちの人を見捨てて―――」
Don’t talk anymore!(それ以上は言ってはいけません!)
「レイジングハート…?」
Don’t give up! Never give up, master!(あなただけは決して諦めてはいけません!)
「でも…私のせいで…!」

 なおも反論しようとするなのはにレイジングハートは叫びかける。
 
 ―――あなたが諦めてしまえば今まで諦めることなく救ってきた人々はどうなるのか。
 
 ―――たった今救おうとして救えなかった人々はただの間違えとして処理されていいのか。
 
 ―――今まで決して諦めなかった主に希望を見出してきた人々の想いを無駄にしていいのか。
 
 レイジングハートは続けざまに普段とは似ても似つかない勢いで主を叱責していく。
 その言葉になのはの目に再び力が宿って来る。
 決して諦めることなく、不可能に立ち向かっていく。

「ごめんなさい……私はきっと馬鹿です。でも……誰かを見捨てるなんて私にはできないんです」
 
 人はそれを愚かと罵るだろう。犠牲となった者の家族は呪うだろう。
 罵詈雑言を投げかけられても文句は言えない。
 だが、正しさだけでは結局人は救えない。衛宮切嗣でさえ気づいてしまった事実。
 人間に必要なのは冷徹な数の計算ではなく温かい希望なのだ。
 笑顔があれば、希望があれば人はどんな荒野からでも立ち上がって歩いて行ける。
 だから、彼女は立ち上がった者達の中から新たな希望が生み出されるように挑み続けなければならない。

 どうしようもなく、馬鹿で愚かな行為。
 しかし、その愚かさこそが真に重要で、人間にとって必要なものなのだ。
 故に、高町なのはは立ち上がる。今までの犠牲を新たなる希望に変えるために。
 決して絶やすことなく、決して折れることのない希望の芽を繋げるために。
 明日世界が亡びるとしても、希望の種を蒔き続けていく。

There is a survivor(前方1000ヤードに) on the front at thousand yards.(生存反応あり)
「うん……わかった。行くよ、レイジングハート
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