4部分:第四章
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はその不敵な笑みで王に言葉を返すのだった。
「これで」
「考えがあるのか」
「その通りです。まずは」
彼はさらに言う。
「噂を流します」
「噂を!?」
「はい、私が枢機卿を除こうとしていると」
あくまで犯人を枢機卿と考えていた。これはもう確信していた。だからこそあえて彼を除こうとしているという噂を立てることにしたのである。
「その噂を流します」
「ですがそれでは」
それを聞いた公爵が怪訝な顔で彼に問う。
「殿下の御身に危険が」
「何、それが狙いだ」
しかし彼はその不敵な笑みで答えるだけであった。
「そうして刺客が来たところを」
「捕らえるというのだな」
「そうです」
はっきりと父王に述べてみせた。
「それで万事は解決します」
「そうであればいいのですが」
「既に何もかもわかっています」
太子の中ではそうであった。あくまで彼の中だけで。他の者がそれを知る由はない。それこそが彼の思う壺でもある。
「後は。話の幕を引くだけです」
「わかった。ではやってみよ」
王はここは彼に全てを任せることにしたのだった。
「思うようにな」
「はい、それでは」
こうして彼はこの事件の解決も全て任されることになった。まず彼は自身の腹心の者を集めてこう指示を出したのだ。すで彼等が枢機卿やそれに近い者達とは何の関わりもないことはわかっていた。
「噂を流せ」
「噂をですか」
「そうだ」
そう彼等に対して告げた。場所はこうした話に相応しい密室の中であった。
「私が枢機卿を暗殺しようとしている。こうな」
「ですがそれは」
早速一人が異議を呈してきた。
「あまりにも危険では」
「そうです。ただでさえ一連の事件は数奇慶賀黒幕と言われています」
別の者もこう言ってきた。
「それでそうした噂を流せば」
「自然と枢機卿が」
「だからだ」
しかし彼は腹心達の気遣いの言葉に対してこう返すのだった。余裕に満ちた笑みと共に。
「だから流すのだ」
「むざむざ狼を呼び込むのですか」
「やはり危険です」
この国では狼が最も恐れられている。だからこそ今狼という言葉が出たのである。
「危険はわかっている」
しかし彼は平然とこう返すだけだった。
「当然な」
「ならば余計に」
「危険過ぎます」
「私が何の考えもなしにするとでも?」
ここでであった。彼は言った。
「思うのか?」
「いえ、それは」
「ありませんが」
それは彼等も思ってはいなかった。太子の鋭利さは彼等もわかっている。そうしたところに湧き起こっている魅力によって彼等も彼の腹心になっているからだ。それについては彼等は否定出来なかった。
「それでは。いいな」
「はい」
「殿下に何か御考えがあれば」
「ではまずはだ」
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