Side Story
無限不調和なカンタータ 5
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引き継げると思うのか!」
「仕方ないよ。だって、神々は親友さんの願いを否定したんでしょう? だったらせめて、最後に直接会った親しい君が受け入れるべきなんだ。良い意味でも悪い意味でも、親友さんには君しか居ないんだから」
「へ?」
「ーーーッ!」
こいつ、何気に「殺した親友さんの代わりに笑いながら、もっと自身の呵責に苦しめ」って言ってる?
整った可愛い顔が色を失くして硬直するのは小気味良いけど、ぼやぼやなカールから出て来た言葉にしては妙に辛辣ね。
女神が伸ばした腕に脇を引っ掛けた状態のまま、首を少し回して背後を確認するが……其処に在るのは変わらぬ笑顔。
まさか、自覚無し?
だとしたら、それはそれで率直且つ厳しい意見ってことになるんじゃ……
「…………ふーん?」
面白い。
投げ遣りだった思考が、ちゃんと「自分」を持ち始めてるのね。
良いわよ。どんどん成長しなさい、カール。
歌えなくなるまでは見届けてあげるから。
「ねぇ、親友さんは何が好きだったの?」
「……」
にこにこしながら首を傾げて問うカールに、視線を落とした女神は沈黙を返す……
「んな!?」
かと思えば、いきなり腕を下ろしやがった! 咄嗟に手首を掴み直してぶら下がったけど……
びっくりするじゃない! 私は浮遊できないのよ!? 自分の意思で降りるのと、そうじゃなく落ちるのとじゃ、着地姿勢が変わるんだから! 突然は止めてよね!
「あの子は……何でも好きだった……。嫌いなものなんて、探すほうが難しいくらい……」
「そっかぁ。じゃあ、歌は? 特にどんなのが好きだった?」
「……明るくて、一節聴けば元気になれる……」
「んー……例えば、こういう歌?」
軽く息を吸ったカールの唇が、またしても弾むように次々と形を変える。
「お日様が、顔を出し、今日も朝がやって来た。鳥が鳴き、犬が吠え、賑やかな時間の始まりだ」
子供向けっていうより、何処となく笑い話っぽい、剽軽な韻律ね。戯けた芸人を連想させる感じ。
楽師にも明、暗、軽、荘厳、その他と、それぞれお家芸的な曲調系統がある筈なのに、これだけ節操無くいろんな歌を取り入れてるって、一体、どんだけの人数に師事したのかしら。
そして、その数だけ見限られてきたこいつって……。
いや、今更それは言うまい。
「そう……。あの子はそういう、頭が悪そうな歌を好んで口にした。生物の日常に調子を付けた、何の教養にもならない内容を。飽きもせずに、何度も何度も、笑いながら……」
声色が微っ妙ーに明るくなった女神の顔を見上げれば、涙をぼろぼろ落としつつも口端が上向いた曲線を浮かべてる。泣き笑いってやつか。
高慢が基本の神にしては珍しい表情だこと。
「本当にこの世界が好きだった
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