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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十四話 ヴァンフリート星域の会戦
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降伏を受けこれ以上の戦闘は意味が無いと判断したようだ。艦隊を後退させつつある。配下の分艦隊から第五、第十二艦隊への攻撃許可を求める通信が届いたが全て却下した。敵は敗走しているんじゃない。十分余力を持って後退しているんだ。お前らは痛い目が見たいのか?
どうやら第一ラウンドはこちらの勝利のようだが、この後はどうなるのだろう。一個艦隊を失った同盟軍は撤退するのだろうか。そうなれば戦争終結だが、ヴァンフリート4=2に補給基地が有る以上簡単に撤退するとも思えない。となるとヴァンフリート4=2の戦いになる可能性が高いが俺たちがヴァンフリート4=2に行くのだろうか。ミュッケンベルガーの判断しだいだが、彼は今回の会戦をどう判断しただろう。勝利を得てもさっぱり先が見えない……。
■ゲルハルト・ヴィットマン
大勝利だった。こちらはほとんど損害が無く完璧な勝利だ。これで反乱軍も撤退するだろう。みんなも大喜びだ。グリンメルスハウゼン提督も顔をほころばせているし、あの嫌なクーン少佐、バーリンゲン少佐、アンベルク大尉も喜んでいる。ミュラー中佐も嬉しそうだ。でもヴァレンシュタイン大佐だけは別だった。静かに艦橋の外を宇宙を見ている。どうしたんだろう。この戦いの作戦案はほとんど大佐が考えたのに。嬉しくないんだろうか。
「ナイトハルト、此処を任せて良いかな。少し一人で考えたいんだ」
「ああ、構わんよ。機雷の後始末はつけておく。あと捕虜もね」
「すまない、ミュッケンベルガー元帥から連絡が来たら構わないから呼び出してくれ」
「判った」
「ゲルハルト、ココアを頼めるかな」
「はい。参謀長室ですか?」
「うん」
大佐は少し俯きながら参謀長室へ向かった。どう見ても勝った軍の参謀長の姿じゃなかった。みんな妙な表情で大佐を見ているけど、大佐は気付かないようだ。
「ミュラー中佐、大佐はどうしたんでしょう」
「……多分、次のことを考えているんじゃないかな」
「次のこと? まだ戦いは続くんですか?」
一個艦隊を失ったのに? あんなに一方的に負けたのに?
「そう考えているようだね。あの表情だと次の戦いは酷くなると考えているんじゃないかな」
いつの間にかミュラー中佐の顔からは笑顔が消えていた。見渡せば皆不安そうな表情を浮かべている。
「オーディンへ戻るまでが戦争だ、気を抜くなって事だね」
オーディンへ戻るまでか……。僕はそんな事少しも考えていなかった。
「さあ、早くエーリッヒにココアを持っていったほうがいい」
「はい」
そうだ、僕は僕にできる事をしよう。大佐はきっと僕をオーディンに帰してくれる……。
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