Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 31. Instant Death・Immortal Life
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「七十五層フロアボス偵察隊が全滅した」
血盟騎士団からその一報が送られてきたのは、十一月七日の昼頃だった。
迷宮区の造りが異常に複雑だったもんで、フロア解放からボス部屋発見まで二週間以上が経っちまってる。迷宮区がキツイ時は大抵ボスは厄介だし、何より七十五層ってのは全百層のちょうど四分の三地点だ。
リーナ曰く、こういう「クォーターポイント」ってのは、過去のボス傾向から見ても飛び抜けた強さを持つ可能性が高いという。確かに、二十五層の頭二つの巨人野郎も五十層の腕十本仏像も、かなり手こずった記憶がある。
だから、今回のボスもサックリ討伐ってワケにもいかねえだろうし、ヒースクリフの奴もそれを見越して五ギルド合同、二十人の偵察隊を編成したらしい。
だが、偵察隊がボス部屋に到達し、前衛の十人が先に入ってボスが出た瞬間、入口が閉じちまったらしい。残された後衛組がスキルやら打撃やらをいくら試しても扉は開かず、五分以上経ってからやっと開いたとき、中には誰もいなかったそうだ。
転移で離脱した奴が一人もいなかった点から、部屋の内部は結晶無効化空間の可能性が高い。単純なボスの強さ以外の脅威の存在が考えられるため、貴方たちも十分注意されたし。メッセージはそう締めくくられ、続く二通目には十三時にコリニアの転移門広場に集合するように書かれていた。
「……まあ、だから特別何かするってわけでもないけど」
そう言って、リーナは四枚目のステーキをナイフで切り分け、口に運んだ。オニオンソースをかけたそれを飲み込み、グラスに注がれた赤ワインを一口。苦戦の可能性が高いボス戦前でもこうやって淡々と大量のメシが食えるってトコを見る限りじゃ、不安とかは感じてなさそうだ。
「敵が強いのも、結晶が使えないのも、トラップ狩りやってる俺らには慣れっこだしな。いつも通り、回避と防御さえ徹底すりゃあアブねえ状況にハマることもねーだろ」
「いくら強くても、流石に一護の縮地に追いつけるとも思えないし……ごちそうさま」
「……はえーよ。一枚食うのに一分かかってねえじゃねーか。ちゃんと噛んでんのか? それ」
「うん、ちゃんと三回は噛んでる」
「そりゃ丸飲みってンだよ。せっかくのレア肉が勿体ねえだろ」
「いいお肉はのどで味わうのが、最近のマイブームだから」
「なんだそのビール感覚」
半眼で見やる俺を余所に、リーナはナプキンで口元を拭うと自分の食器をさっさと片づけ始めた。
今までは食ったらソファーに直行だったのに、今じゃメシの準備片付けはコイツの担当になっている。口元を汚しっぱなしにすることもなくなったし大した成長だ。とか、自分の食器を片づけながら、親父のような感想を抱く。
「……よし、片付け完了」
「さんきゅ。んじゃ、そろそろ行くかよ」
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