第三章
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「ここでファイターズが負ければ」
「余計にゲーム差が開くから」
「今日は勝たせてもらいます」
「そう言うけれどうちもね」
雄太郎も言う、引けないといった顔で。
「首位固めをしたいから」
「阪神は今首位で二位ヤクルトと三ゲーム差ですね」
「うん、ここで差をもっと開けて今のうちにね」
交流戦の間にだ。
「そうしておきたいから」
「今日は、ですか」
「勝ちたいよ」
「三ゲームもあればいいのでは、いえ」
「阪神だよ」
「そうですね、阪神はです」
それこそとだ、玲子も阪神のことを知っていて言う。
「三ゲームあろうとも」
「あってないが如しだよ」
「何があるかわからないチームですね」
「三ゲーム差あっても安心出来ないよ」
それだけのゲーム差も一瞬で消え去ってしまうチーム、それが阪神タイガースというチームだ。阪神というチームに絶対安心という言葉は存在しないのだ。
「だからね」
「そうですね、しかし」
「日本ハムはだね」
「今日は勝たせてもらうよ」
こう言ってだった、二人は。
それぞれのスタンドに行って応援をした、そして試合の結果は。
玲子は次の日の朝だ、雄太郎に社長室で言った。
「残念でした」
「悪いね、昨日は」
にこにことして言う雄太郎だった。
「勝たせてもらったよ」
「岩田投手お見事でした」
「完封したからね」
「手も足も出ませんでした」
その中田にしてもだ、玲子が贔屓にしている。
「二点に抑えたのですが」
「それでもだね」
「はい、一点も取れなくては」
それこそというのだ。
「勝てません」
「そうだね」
「ですから」
「ですから?」
「今日はげん担ぎで」
こう言ってだ、そしてだった。
玲子は雄太郎に自分の携帯電話を見せた、そのストラップには。
ファイターズのマスコットがあった、あの熊のマスコットだ。
それを見てだ、雄太郎は玲子に尋ねた。
「れがげん担ぎなんだ」
「そうです」
「今日も占いを見て?」
「いえ、このB・Bを以前ストラップにしましたら」
ファイターズのマスコットの名前である、二〇〇四年に北海道に本拠地を移転した時に誕生した。最初は何かと言われていたらしい。
「優勝しましたので」
「だからなんだ」
「はい、げんを担いで」
「そのマスコットを飾るんだ」
「そうします」
こう雄太郎に言うのだった。
「逆転優勝です」
「ソフトバンクも強いけれどね」
「明日からの巨人戦は三連勝します」
憎むべき球界の癌にというのだ。
「そうして反撃の狼煙とします」
「ああ、巨人に勝つのならいいよ」
雄太郎も阪神ファンとしてこのことはいいと返した。巨人が好きな阪神ファンはシーラカンスよりも貴重である。
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