第一章
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美人秘書
面倒玲子は八条ソフトの社長である八条雄太郎の秘書である、秘書といっても怪しい関係はなく健全な
ビジネスライクな関係だ。
秘書として極めて優秀でだ、雄太郎の仕事を見事に支えている。
それでだ、雄太郎は笑顔で彼女に言うのだった。
「僕は玲子君がいないと駄目だよ」
「いえ、その様なことはありません」
玲子は落ち着いた顔で彼の褒め言葉にはこう返していた。
「私なぞは」
「そう言うけれどね」
「私は、ですか」
「うん、とてもよくやってくれているよ」
これが雄太郎のいつもの返し言葉だった。玲子のその切れ長の奥二重の瞳と細く形のいい眉、高い鼻に小さな紅の唇と白い肌、黒く肩のところで切り揃えた髪という整ったクールビューティーと言っていい顔立ちも見ながら。
膝までのスカートのスーツに黒のハイヒールを身に着けた一六六の背に見事なプロポーションもいい、雄太郎はその美貌も見つつ言うのだった。
「君がいてくれてこそだよ」
「社長ご自身のお力です」
「そうかな」
「そうです、では今日の予定ですが」
早速だ、雄太郎に本日のスケジュールを出すのだった。
「こうなっています、そしてお昼は」
「ああ、今日は」
「はい、バンダムの社長様とです」
「レストランで食べながらだね」
「お話をすることになっています」６０
「わかったよ、ではね」
「はい、そのメニューですが」
玲子はその昼のレストランでのことも話した。
「お野菜をメインにしていました」
「お野菜を？」
「はい、近頃お野菜がです」
それが、というのだ。
「社長は召し上がられていないので」
「そうかな」
「栄養はバランスよくです」
「いつもそう言っているね」
「健康であればこそです」
まさに、というのだ。
「働けます」
「そうだね、健康でないとね」
「とても動けません」
「だからだね」
「はい、お願いします」
こう言うのだった、玲子は。
玲子は万全の仕事をしていた、その仕事ぶりはまるでサイボーグの様に的確だった。だが社内の誰も玲子を冷たいとは思わなかった。
女子社員達がだ、こんなことを話していた。
「玲子さんってね」
「あの人結構お茶目よね」
「そうそう、何気ない時にね」
「ふと冗談言ったりね」
そうしたことをするというのだ。
「携帯のストラップなんてね」
「猫よね」
「何でも猫好きらしいわよ」
「あっ、そうなの」
「何でもスコティッシュフォールド好きらしいのよ」
「あっ、あの丸顔で垂れ耳の猫ね」
耳は垂れていない場合もある。
「あの猫好きなのね、特に」
「それで飼ってるのね」
「そうなのね」
「そうみたいよ、無類の猫好きで」
それで、というのだ
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