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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十二話 ゲルハルト・ヴィットマン
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かなゲルハルト」
ミュラー中佐は穏やかな人柄だ。何処と無くヴァレンシュタイン大佐に似ているけど親友だから似るのかな。
「ミュラー中佐はヴァレンシュタイン大佐と親しいですけど、大佐は士官学校ではどんな生徒だったんでしょう?」
「どんなって、なぜそんな事を聞くのかな」
「こんな事を言うと怒られるかもしれませんが、大佐は何かぜんぜん軍人らしくありませんし……」
そう言うとミュラー中佐はおかしそうに答えてくれた。
「そうだね、確かに軍人らしくはないな。私が見てもそう思う。エーリッヒは編入生でね、私が親しくなったのは一年の終わりの頃だったな。但しそれ以前から関心は有ったよ。あの容貌だろう、それに歳は確か十二歳だ、なんとも可愛らしい士官候補生でね。あれで腕白とか乱暴とかだったら違ったんだが、エーリッヒは授業が終わるといつも図書室で勉強するか本を読んでいたから本当は女なんじゃないかって皆言っていたよ」
なんとなくわかる気がする。大佐に言ったら怒られそうだ。
「からかったりしたんですか」
「まさか! 君は知らないだろうけどエーリッヒは怒ると怖いんだ」
中佐はちょっとおどけた感じで言った。
「大佐を怒らせたんですか」
「怒らせたのは私じゃないけどね、もう少しで殴りあいになる所だったよ」
そう言いながらも、中佐は懐かしそうだ。
「大佐は兵站科を専攻したって聞きましたけど……」
「本当は戦略科にも行けたんだ、成績は良かったからね。私よりも良かったよ。教官達も戦略科へ行く事を薦めていた。ただ本人が行きたがらなかった。体が弱かったから作戦参謀とかは無理だと言ってね。帝文にも合格したから軍務省の官房局や法務局へも行けたんだけど、本人が兵站統括部への配属を希望した。出世には興味が無かったんだと思う」
「どうして出世に興味が無かったんでしょう」
「……さあどうしてかな。色々有るからね」
中佐は何か知ってるみたいだったけど話してはくれなかった。
「君は明日から自宅へ戻るんだったね。両親とゆっくりしてきなさい」
「はい」
質問の時間は終わりだった。僕はミュラー中佐に御礼を言って自室に戻った。
僕は明日から二日間自宅に帰る事を許されている。出兵前に悔いの無いようにという事だ。大丈夫、僕が戦死するとは思えない。あの二人がいるなら何の心配も要らないと思う。だから胸を張って両親に会いに行こう。そして此処に戻ってくる。きっと二人は優しく僕を迎えてくれるはずだ。僕はもうグリンメルスハウゼン艦隊旗艦オストファーレンの一員なのだから……。
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