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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第九話 剣 
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さく口の中で何かを呟くルイズに気付いたアンリエッタが、口を閉ざし、耳を澄ますと、

「五月蝿いッ!! この馬鹿ッ!! 何が何もかも捨ててついていきたいって、何が嘘でもって……何が……何が本気で人を好きになったことがないって! わたしだって本気で人を好きになったこたぐらいあるわよ!! 何よ……何よ……もう……そんな……こと……言われたら……わたし……」
「そう……あなたも……なら、わかるでしょう……ルイズ……お願い……これが最後の命令よ……道を……開けてちょうだい」

 草むらから鳥が飛び立つ程のルイズの怒声は、段々と尻すぼみに小さくなっていき、最後には耳を澄ましても聞こえないほど小さくなっていく。顔を俯かせ、ふるふると全身を震わせるルイズの姿に、アンリエッタは小さく震える声で最後の命令を伝えた。
 ルイズには、もう、アンリエッタを止めることは出来ないでいた。アンリエッタの想いが、痛いほど分かるのだ。自分もそうだ……士郎がどこかに行くのなら……わたしだって……。
 
 顔を俯かせているアンリエッタの手を取り、ウェールズが、草むらから現れた死者の騎士と共に歩みだそうとする前に……士郎が立ち塞がった。





 

 王族には……何かしらの責任はあるだろう。

 しかし、十八に届かない少女に、王という重荷を背負わせることが……花のような笑顔を見せる、その顔を曇らせるのが……正しいわけが……ない。

 もし、一緒にいるのが、本物のウェールズだったとしたら、止めることはなかっただろう……。

 だが……。

 だが……今、アンリエッタが付いていこうとしているのは……ウェールズではない……。

 なら……。






「アンリエッタを離せ」
「シロウ……さん。お願い、どいて下さい」
「ふぅ……シロウ、アンリエッタもこう言っている、さっさとそこ――」
「黙れ」
「っ」

 立ちふさがる士郎にアンリエッタが懇願する。肩を竦ませ、虫を払う様に手を振って退くよう示すウェールズだったが、殺気と言うのも憚るほどの冷気を漂わせる士郎の視線を向けられ、始めて笑顔を崩した。

「貴様はさっさとアンリエッタの手を離せ」
「シロ、ウ、さん?」

 士郎と顔を合わせたのは、数える程しかないアンリエッタだが、優しい人だと思っていた士郎の、今までとの余りの違いに、若干怯えが混じった目を向ける。怯えた顔を向けるアンリエッタに、士郎は目尻を微かに下げると話しかけた。

「アンリエッタ。君が女王の地位を捨て、誰かと共に生きたいと言うのなら、俺は別段止める気はない。場合によっては力になっても良いだろう」
「え」

 予想外の士郎の言葉に、アンリエッタは戸惑う様子を見せる。

「だが、すまないがこれは許
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