悲しみとかすかな希望
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俺は溜息をついた。
恋奈がいなくなってから何日目だろうか。
あの日、恋奈はコンビニでトイレに行くと言ったきり、30分経っても戻ってこなかった。
不思議に思った俺と土方さんが唯一空いていた多目的トイレの中に入ってみると、そこには恋奈の見慣れた髪ゴムが落ちていた。
俺と土方さんはそのとき悟った。恋奈は誘拐されたのだ、と…。
それからしばらく経ったが(本当は1日ぐらいしか経っていないかもしれないが、俺にとっては一週間に思えた)、恋奈は見つからない。
恋奈が失踪したコンビニの近辺を探してみると、近くの茂みに、恋奈の隊服がゴミ袋に入って捨ててあるのを発見した。
ということは、恋奈は今下着だけということになる。犯人がもし男だったら、そいつは変態だ。
なんてことを考えても、今は笑えない。そばに恋奈がいないからだ。もし恋奈がいれば、それを話して一緒に笑っていただろう。
でも、今ここに恋奈はいない。
その悲しみが、みんなを覆っている。俺はそう思った。
今は今日の捜索が終わり、みんなで団欒していたが、元気なのは子供達とはかせ、平次だけで、他のみんなは悲しみのあまり黙りこくっていた。
ピンポーン。不意にチャイムが鳴り、子供達がドアを開けに行く。
話し声が聞こえ、子供達が俺たちに言った。
「今から、小五郎のおじさんのファンだっていう病気の子のお見舞いに行くらしいんだけど、お兄さん達はいかない?」
気分転換になる。行こう。俺はそう思って、上着をとってみんなに告げる。
「俺は行きまさぁ。土方さん達はどうしやす?」
みんなは頷き、立ち上がって玄関へとぞろぞろ向かった。
俺は思った。まるで、死者が行進してるみたいだ、と。
病院に着くと、小五郎さんが受付で「えっと…」と用件を話し始め、俺たちは少し暇になった。
車椅子を押して歩く看護婦さん、椅子に座って待つ松葉杖の男の人…いろんな人がいた。
「あの…」後ろから声をかけられ、振り向くと、俺と同い年くらいの女の人。「その上着から、ボタン、落ちましたよ。」
と言って差し出されたボタンを受け取り、お礼を言う。
顔を見た。
そして愕然とした。
そこには、恋奈が立っていたからだ。髪の毛は結んでないし、メガネをかけているけど間違いない。
「恋奈っ??」
思わず大声を出してしまう。その声を聞き、他の人たちも恋奈に気づき、駆け寄ってくる。
「大丈夫アルカ?」「心配したんだぜ…」「怪我ないですか?」
しかし、恋奈はきょとんとしたままだ。気づいてないのだろうかと思い、俺は声をかけた。
「恋奈、俺たちでさぁ。」
すると、恋奈は首をかしげて、こう言ったのだった。
「どなたですか?あいにく、恋奈という名前に聞き覚えがないのですが…私の名前は、怜愛ですし…」
信じられない。くらっとする感覚を覚
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