〜トアル事件〜
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「ふうん。放送局ねぇ。いいんじゃない?」
親に放送局に入ることを伝えるとなんなくOKされた。
うちの親は基本的にはリベラリスト(自由主義者)であるから、予想通りの返答だった。
放送局と聞いても話を聞くまでは活動内容が想像出来なかった。
たぶん活動内容が予想できないのはあの中で唯一だろう。
陸上部なら走る。野球部なら野球とだいたいの部活のやる事はわかる。
だが放送局は部活で放送するわけではない。
いや、学校祭の時期などは別なのだろうが、基本的に放送はしないと言われた。
主な活動は発声練習だそうだ。あとは滑舌練習。
まあそれっぽいといえばそれっぽいか。
大会には朗読部門、アナウンス部門があるらしく、僕は声質でアナウンスとなった。
まあ本音を言うと大会に出るために入部したわけでないのだけれど。
ただ最初の活動は「掃除」らしい。
なにせ何年もの間局員がいなかったそうだ。
そこでまずは掃除と銘打った片付けをしなければならない。
どこまで散らかってるのかは知らんが先生の物言いからしてそこそこやばいらしい。
まあ僕の部屋ほどではないのだろうが。
「うわぁ……これは……」
話に聞いていたのとはどこか違う。
散らかっている。確かに散らかっている。
それは嘘ではないけれど少し語弊がある。
散らかっているというよりは整理していないというほうが語弊が少ない。
棚の中にはDVDではなくビデオテープ。
ケースの中にはCDではなくレコードやカセットテープ。
テレビも液晶ではなくブラウン管。
なんというかここだけ時代が止まっている。
いや、時代が交錯している。
よく見ればCDも数枚あるし、何故か最新型のモデルガンもある。
だがカメラは使い物にならなそうだしパソコンもない。
どうやって編集しろというのか。
なんでもあるが必要なものは極端にない。
そんな部室だった。
放送室ならではの防音壁もところどころ崩れている。
「えーっと……これはどうしよう……。」
まずどこから片付けるべきかわからない。
それは散らかりすぎてという意味ではない。
ただなにが必要で何が必要でないのか。
そこが明白でない限り手の出しようがない。
「とりあえず……ゴミ箱確認。」
礼奈が文字通り恐る恐るゴミ箱を開ける。
するとやはり予想通りの結果だった。
「うわ……もう入んないじゃん……。」
ミカが思わず声を漏らす。
赤いゴミ箱の中は既に飽和状態だった。
何年間このままなのだろうか。
少なくとも5年はそのままなのだろう。
だがどうしたものか。いきなりここから手をつける気にはなれない。
「……最後にしよ?ここは。」
陽香梨の提案には全員が賛成した。
だがここを後回しにしたらどこを片付ければいいのか。
いや、棚の中しかないだろう。
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