ビギンズナイト
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て……次に、身体の方は動かせますか?」
「やってみます……。すぅ……はぁ……ッ〜〜!」
全身の筋肉が衰えて身体を動かすだけでかなり体力を消耗してしまうが、なのははどうにか上体を起こす事が出来た。あれから伸びっ放しであまり手入れがされていない自分の茶髪が顔にかかり、少し鬱陶しい気持ちを感じながらも、主治医を見つめ続ける。
「結構、自力で動けるのであれば、後に行うリハビリも早く済みますよ。では……そろそろまとめて、あなたの疑問にお答えしていきましょう。まず、あなたの状況を説明します。落ち着いて聞いて下さい。……あなたは4ヶ月前、重傷を負いました。胸の致命傷に加えてヘリの爆発に巻き込まれて、それはもう酷い有様でした」
そう言って主治医はレントゲン写真を彼女に見えるように提示する。そこには全身の至る所に大量の異物が入っている事が、一目見るだけでわかる程だった。
「救出された時、あなたの身体には108個の破片が刺さっていました。主に金属片でしたが、今は手術によって全て取り除かれています。墜落時にヘリに乗っていた者の中では、最も少ない量でした。そう、あなたは幸運だったのです。友に恵まれるという幸運に……」
「友?」
「ええ、あなたの代わりに他の金属片を受け止めたのはあなたの同僚……。あの時、最後まで共にいた……あなたの仲間です」
「ッ……!」
「彼女は墜落する直前、あなたの上に覆い被さる事で、自分の身を盾にしました。その結果、あなたに襲い掛かるはずだった金属片1024個は代わりに彼女を穿って穴だらけにし、同時に墜落の衝撃も彼女の身体がある程度クッションになりました。しかし……やはり人の身で墜落の衝撃全てを防ぐ事は不可能で、複雑骨折、出血多量であなたの生命は風前の灯火でした。ええ、我々も最善を尽くし、どうにかあなたの生命を繋ぎ止める事は出来ました。ですが……」
主治医はまた違うレントゲン写真を出し、さっき出した写真の隣に並べる。
「これが今のあなた、あなたの姿です」
その写真に写るなのはの身体は、隣の写真にあるような破片の痕跡は綺麗さっぱり無くなっていたのだが……致命的に足りない部分があった。写真の右側、本来なら左腕があるはずのスペース……そこには何も無かった。肘から先が……虚空になっていた。
「実際に見てください。遅かれ早かれ……いつかは受け入れないと」
鼓動が早くなる。なのはがかろうじて保っていた精神の堤防が決壊しそうになる。
「気持ちはわかります、ですが自分の腕を……自分の目で確かめてください。勇気を出して……」
恐る恐るなのはは右手に視線を向け……続いて左手を見ようとする。
だが……無かった。
左腕が、無かった。
無いものを見る事は出来ない。無いものを
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