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第一章
素顔の正義
北條潤という。
黒髪で広い額を隠している。引き締まった顔をしていて頬は細い。目は一文字の一重であり唇は薄い。やや薄い眉も目と同じ様に一文字だ。背は高く一八〇ある。
ある有名大学の法学部を優秀な成績で卒業し警視庁に第一種で入った。所謂キャリア組だ。
キャリアといえば東大法学部と言われているが彼はその点は違っていた。だがその東大組から見てもだ。彼の能力はというと。
「勝てないな、あいつには」
「あんな切れる奴はいないな」
「どんな捜査もあいつが入れば解決する」
警察官としてだ。まずはそこが評価されていた。
「現場にも顔を出して的確に動いて指示を出してな」
「動きに無駄がない」
「エルキュール=ポワロの頭脳とフレンチ警部の緻密さ」
この二つがあるというのだ。
「それにマイク=ハマーの行動力もある」
「フィリップ=マーロウの肝もな」
「とにかくあんな奴は他にはいない」
「おまけに腕も立つしな」
しかも強いというのだ。
「剣道に柔道もできる」
「いつもやってるからな、稽古も」
「多分あいつが警察庁長官になるぞ」
「絶対にだな」
その能力は誰もが嫉妬し羨望するものだった。しかしだ。
その人間性はどうかというとだった。
これもだ。誰もが言った。ただし忌々しげな調子でだ。
「嫌な奴だ」
「嫌みな奴だ」
「何かあればすぐに嫌なことを言う」
「あんな嫌な奴は見たことがない」
「全くだ」
人間性についても言われるがそれは最悪だった。まず同期で彼の友人と言える様な者はいなかった。それはキャリアの先輩達からもだった。
「俺はあいつに濡れ衣を着せられたんだ」
「些細なことを報告されて左遷だぞ」
「大袈裟に人事に報告されたんだ」
「俺の後釜にあいつが入って実績をあげて出世したんだ」
「あいつのせいで俺は失脚だ」
「あいつだけは許さないからな」
こうした感じだ。彼に左遷させられたり失脚させられたりした者ばかりだった。彼は先輩を飛び越えてさえ出世していたがその裏にはだ。
こうした蹴落とされた者が大勢いた。彼の警察での評価はつまりだ。
有能だが嫌な男、こうしたものだった。
しかし彼自身はだ。その評価について何とも思わずだ。
仕事をし事件を解決し出世をしていく。その為まだ三十代だというのにだ。
警視長だ。警視正からだ。
そうなってだ。さらに功を挙げていた。
その彼の下にいる部下達もだった。彼の下で仕事をしている合間にだ。
休憩室でコーヒーを飲みながらだ。こんな話をしていた。
「緊張するな」
「ああ、俺達には何も言わないけれどな」
「それでも何かな」
「鋭いしな」
剃刀とまで言われて
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