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魔法少女リリカルなのはStrikers〜誰が為に槍は振るわれる〜
第一章 夢追い人
第8話 彼の来た理由―後編
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海鳴市の閑静な住宅街を流れる静かな川。
異常気象の豪雨でも降らなければ氾濫することもなく、不良の溜まり場になっているわけでもないその静かな川に、地面を揺らす轟音が鳴り響く。
音の正体はラディのデバイス、セラフィム。
待機形態である指輪から武装形態である斧槍へと姿を変え、その柄が地面に落ちたことで生まれた衝撃がこの静かな川に似つかわしくない轟音の正体であった。
高機動の陸戦魔導士ラディオン・メイフィルスのデバイス、セラフィム。彼女を一言で言い表すなら、“巨大”だった。
斧の刃は本来落とすことしか想定されていないギロチンの刃もかくやというほどに厚く、広く、そして長い。先端のニードルは子どもの背丈ほどの長さを持ち、返しのスパイクに至っては突起というにはあまりにも大きく、直撃すればその部位ごと身体がもがれてしまうだろう。
それらの規格外の穂先を支える柄もまた規格外。
穂先の中心に据えられた緑色の宝石型のコア、そしてその下にあるリボルバー式のカードリッジから伸びる柄の長さだけでも2m以上あり、太さも大人の女性の腕ほどもある。
柄の末端にある石突は、それそのものだけで槌と呼んでも差し支えはないほどの大きさを誇っていた。
デバイス全体を包む純白という色が、その規格外の巨体をさらに際立たせ、相対するものを威圧していた。
事実、後ろから見ていたなのは達はセラフィムのその威容に目を瞠り、味方であるにもかかわらず微かな恐怖を抱いていた。
だがそれ以上に、なのは達の胸はラディへの心配で一杯だった。
巨人かなにかが扱うのかと疑いたくなるデバイスに対し、ラディはあまりにも華奢で小さかった。
確かにヴィータという例外はいるものの、それはあくまで例外。一般論ではない。
さらにいえば、ヴィータが膂力にものをいわせるタイプの騎士であるのに対し、ラディは機動力に優れた騎士である。長さも重さも自分の倍近くはある武器を持つべき騎士ではない。
アレは……マズい。
なのは達の頭に、セラフィムを振るった瞬間その重さに押し潰されるラディの姿がよぎる。
だがラディを止める者はいなかった。
先程彼は、自分達がただのゴミだと断じた空き瓶を使って敵の情報を引き出し、その情報に基づいて指示を出してみせた。
それは戦い慣れているからこそできたことだ。そんな彼が、自分の扱えない武器を使うとは到底思えない。
それになにより――
「ラディ陸曹……笑ってる?」
ラディは――笑っていた。
無邪気に、歳不相応の幼さを漂わせて、悪戯に成功した子どものような顔で、ラディは笑っていた。
いや、悪戯に成功したというのは間違いだろう。これからその悪戯を、披露するのだろうから。
「さぁ、行こうか」
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