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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十話 グリンメルスハウゼン艦隊
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ミュッケンベルガーの関係は微妙にそれ以前とは違ってきた。事件以前は良く言って”中立”だったが、現在では悪くても”中立”、良く言って”友好的”となっている。お互い共通の秘密を抱え帝国暦484年はサイオキシン麻薬密売事件の後始末で嫌でも協力せざるを得なかった事が原因だった。

 逮捕者が続出した事で軍の人事配置は滅茶苦茶になった。空いたポストに穴埋めしているそばから逮捕者が続出、辞めていく人間が出るのだ。人事を扱う人事局では増員してまで対応したが、それでも追いつかずに作業が停滞した。人事局長ハウプト中将は”きりが無い。帝国暦484年は人事局と憲兵隊に戦死者が出るだろう”と悲鳴を上げた。

 ミュッケンベルガーは新たに再編された宇宙艦隊の訓練に当たった。幸い同盟軍が行動を起こさなかったので訓練が出来たがそうでなければサイオキシン麻薬密売事件でガタガタになった軍を率いて出兵しなければならなかったろう。帝国暦484年は大規模な戦争が無かったにもかかわらず、軍事費は前年同様の支出を見た。出兵費が訓練費に変わっただけだった。

 存在感が薄れるのを恐れたシュタインホフが出兵を主張したがその阻止でも協力している。二人にしてみれば、シュタインホフの出兵論など愚劣以外の何者でもなかった。それらの出来事が一種の同志的連帯感を生み出している。

「あの老人をささえるのだ。それなりの人材がいる」
「……彼はどうかな。ヴァレンシュタイン大佐は」
「ヴァレンシュタイン大佐か、せめて准将でなくては格好がつくまい」

「グリンメルスハウゼン中将に期待しているのかな」
「まさか。期待するだけ無駄であろう」
「なら問題あるまい。だれが参謀長でも」
「それはそうだが」

「ヴァレンシュタイン大佐は無能では無いのだ、上手くやれば良し、失敗しても元々期待していないのだ、構うまい」
確かに無能では無かった。アルレスハイム星域の会戦での勝利が当時の軍の立場を強化したのは間違いない。だが……

「軍務尚書、以前もこんな会話をしたような気がするのだが」
「……確かにそうだな。しかし結果は悪くなかったと思うが」
二人は顔を見合わせ、共に曖昧な表情を浮かべた。

■エーリッヒ・ヴァレンシュタイン

俺はその日人事局へ出頭した。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン大佐です。人事局より出頭命令を受けました」
人事局の受付でそう告げると、例の受付嬢がハウプト中将閣下がお会いになりますと答えた。相変わらず好奇心一杯の表情で俺を見ている。それを無視し礼をいって局長室へ向かった。俺はまだ警戒される存在らしい、待つ事も無くハウプト中将はすぐ俺を奥の個室へ呼んだ。

「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン大佐、入ります」
「ヴァレンシュタイン大佐、元気そうだね」
「有難うご
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