第3章 リーザス陥落
第79話 生気抱擁
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香は、絶望などしなかった。何故なら、裏を返せばそれはまだ、ユーリが生きている証明にもなるのだから。
『――……生気を、この男に与えよ』
『……ぇ? せい、き……?』
その言葉の意味は判る。だが、具体性が無かった。
生きている気配が無い。即ち、生気が無い。と使う事もあるし、後は万物を育てる自然の力とも言う意味だ。 何をすれば良いのかが、判らなかった。
『生きとし生けるものの、全てに――生気は宿っている。それは生命エネルギー、と言えるだろう。それを この男に与えよ。それ以外に方法はない』
『ど、どうやって?』
『具体的に言うならば、――その男を、抱擁せよ』
『っ……!?』
志津香は、少しだけ、ほんの少しだけ動揺をしてしまったが、直ぐに気を取り戻す事は出来た。……今は非常事態なのだから。
『以前、忍の娘も この男の手を握り続けた。縋り付いた。――故に、快復の速度が速まった。だが、今回ばかりは それでは足りぬ。 ――だが、娘よ。これは主もただでは済まない可能性があるぞ。行為そのものは簡潔なれど、反動で主の生気も奪いかねない』
忠告、だった。だけど、志津香がする事は1つ、願うのは1つだけだ。
――ユーリを、助ける。
志津香には、それ以外考えられなかった。
その想いを汲み取ったのだろうか。
――……ふっ。強いものだ。人と言うのは……。
そういったのが最後だった。
そして、場が突如光り輝く。
――我が手を貸すのは、この男を媒体にせねばならない。故に 今の状態で 手を貸すのはほぼ不可能だ。命を奪いかねない故にな。だが、道標くらいは、示してやろう。
その光が止むと、その声は全く聞こえなくなった。
そして、次の瞬間、世界が再び動き出した。
「っ!!」
志津香は、突然動き出した反動で、倒れそうになったが、必死にこらえたと同時に、辺りを見渡した。
そして、間違いなく身体が動く事を確認した時、突如 光のラインが岩肌に向かって伸び貫通したのだ。その光は 岩を削り、1本の道筋を作った。
伸びた先にあるのは、古びた小屋だった。
「あそこ、あそこまで……行けば……っ!」
志津香は、ユーリに託された竜角惨と元気の薬。そして 自分自身の持ちものを漁って、何か無いか、を確認した。
出てきた世色癌を口に含み 噛み砕き、苦味が口の中を蔓延する状態で、更に竜角惨をも噛み砕いて、元気の薬と共に身体の奥底へと移送した。あまりの逃がさ故に、コーティングをさせ、胃の中で消化されながら、全身へと広がっていく様に作ってある薬。効果は、噛み砕いた方が吸収性を増
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