暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第79話 生気抱擁
[10/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
香は、絶望などしなかった。何故なら、裏を返せばそれはまだ、ユーリが生きている証明にもなるのだから。

『――……生気を、この男に与えよ』
『……ぇ? せい、き……?』

 その言葉の意味は判る。だが、具体性が無かった。

 生きている気配が無い。即ち、生気が無い。と使う事もあるし、後は万物を育てる自然の力とも言う意味だ。 何をすれば良いのかが、判らなかった。

『生きとし生けるものの、全てに――生気は宿っている。それは生命エネルギー、と言えるだろう。それを この男に与えよ。それ以外に方法はない』
『ど、どうやって?』
『具体的に言うならば、――その男を、抱擁せよ』
『っ……!?』

 志津香は、少しだけ、ほんの少しだけ動揺をしてしまったが、直ぐに気を取り戻す事は出来た。……今は非常事態なのだから。

『以前、忍の娘も この男の手を握り続けた。縋り付いた。――故に、快復の速度が速まった。だが、今回ばかりは それでは足りぬ。 ――だが、娘よ。これは主もただでは済まない可能性があるぞ。行為そのものは簡潔なれど、反動で主の生気も奪いかねない』

 忠告、だった。だけど、志津香がする事は1つ、願うのは1つだけだ。



――ユーリを、助ける。



 志津香には、それ以外考えられなかった。
 その想いを汲み取ったのだろうか。


――……ふっ。強いものだ。()と言うのは……。


 そういったのが最後だった。

 そして、場が突如光り輝く。



――我が手を貸すのは、この男を媒体にせねばならない。故に 今の状態で 手を貸すのはほぼ不可能だ。命を奪いかねない故にな。だが、道標(・・)くらいは、示してやろう。



 その光が止むと、その声は全く聞こえなくなった。



 そして、次の瞬間、世界が再び動き出した。






「っ!!」

 志津香は、突然動き出した反動で、倒れそうになったが、必死にこらえたと同時に、辺りを見渡した。

 そして、間違いなく身体が動く事を確認した時、突如 光のラインが岩肌に向かって伸び貫通したのだ。その光は 岩を削り、1本の道筋を作った。

 伸びた先にあるのは、古びた小屋だった。


「あそこ、あそこまで……行けば……っ!」

 志津香は、ユーリに託された竜角惨と元気の薬。そして 自分自身の持ちものを漁って、何か無いか、を確認した。

 出てきた世色癌を口に含み 噛み砕き、苦味が口の中を蔓延する状態で、更に竜角惨をも噛み砕いて、元気の薬と共に身体の奥底へと移送した。あまりの逃がさ故に、コーティングをさせ、胃の中で消化されながら、全身へと広がっていく様に作ってある薬。効果は、噛み砕いた方が吸収性を増
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ