暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第79話 生気抱擁
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だ。
 
「っっ……!!!」

 志津香は、ユーリから受け取った元気の薬をユーリに無理矢理飲ませようとしたが、口の中から、溢れてしまい 飲ませる事が出来なかった。


 もう、躊躇などしてられなかった。いや、そんな事 全く考えてなかった。


 志津香は 元気の薬を 自身の口の中に含ませると、ユーリの唇に自身の唇を押し当てた。
 空気と共に、元気の薬を無理矢理ユーリの身体の中へと流し込む。喉を通った感触はあった。……だが、ユーリの状態が変わる事は無かった。

「ど、どうし、たら……っ ゆぅが……ゆぅ……がっ」

 このままでは、ユーリが死んでしまうかもしれない。以前は、目を覚ましたそうだが、二度続く、と志津香は、そんな楽観的な事は考えてられなかった。







 その時だった



――世界が、止まったのだ。 




 


 志津香自身は全く動けない。
 ユーリを助けたい。早くここから一緒に連れ出したい、と行動に移したかったのに……全く動けないのだ。

 それだけではない。

 舞い上がる砂埃、崖から落下している小石、この場の全てがまるで時間が止まったかの様に、静止しているのだ。

 こんな現象は初めての事だった。時空転移をした時もこんな感覚は無かった。

『――無理を、したな。いや し過ぎ、と言えるか。……本当に仕様がない男だ』

 そんな時だった。
 全てが止まった世界で、志津香の耳に声が届いたのは。

『我の忠告を無視し、以前どの様な事になったか、忘れた訳ではない筈なのだが、よもや三度とは。……魔人相手とはいえ。一度目とは違うとはいえ、二度も《神威》の力を、その片鱗を纏わすとは。今回ばかりは―――死ぬぞ』
『ッ……!』

 話をしているのが、誰なのか判らない。
 だけど、何故だろうか。志津香には敵だとは思えなかった。

『(お、お願いっ!! ゆぅ、ゆぅを……、助けて、助けてっっ!!!)』

 志津香は、声にならない声を必死に上げて叫んだ。言葉を口から発せられているのかどうか、判らない。

『我としても、この者が死せるのは好ましくはない。人の身でありながらも、神威を体現した程の器の持ち主。今、失えば 今後いつ。如何な時を過ごせば これほどの男と巡り会えるのか判らん。……娘。我が声に耳を傾けよ』
『っ……』

 志津香は、意識を集中させた。その言葉の1つ1つを 決してもらせない様に。

『この男には 快復が必要なのは間違いない、が。それを 人間の範囲で考えるな。――強大な力を纏わせた反動で、命を喰われかけているのだ』


――……命を喰われかけている。


 つまり、死の一歩手前、だという事が判った。
 志津
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