第二章
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「そこはもう言っても仕方ないから」
「あげるのね」
「そうしなさい、いいわね」
「あれこれ考えるずに」
「考えても仕方ないから」
「そうした日ってことで」
「彼氏にチョコレートあげる日」
告白なり義理なり何でもだ、異性にというのだ。
「わかったわね」
「じゃあクラスの皆にも義理チョコ用意してね」
「チロルチョコとかパラソルとか」
「それ本当にあげるの?」
「義理だから」
「まあチョコレートも出費だしね」
一つ一つは安くともクラスの男子総勢二十人にあげるとなるとだ。バレンタインデーは女の子にとっては痛い出費の日でもあるのだ。
「安く済ませるのも必要よね」
「義理だとね」
「けれどチロルチョコはあからさま過ぎるから」
「普通のチョコレートをなのね」
「出来る限りそうした方がいいわよ」
「それで佳彦君には」
「手作りあげるのよ、いいわね」
「朋美もね」
こんな話をだ、由美子と朋美はクリスマス少し前二月に入ってすぐの時に話していた。そしてクリスマス当日は。
八条学園のある神戸は雪だった、しかも普通の雪ではなく。
由美子はクラスに入ってだ、窓の外を見て一緒に来た朋美に言った。
「一面ね」
「雪ね」
「ええ、もう二十センチは積もってるのに」
「まだ降ってるわね」
「大雪じゃない」
文字通りのそれだというのだ。
「まさに」
「登校するのも一苦労だったわね」
「全く、えらいことね」
「冬だからね」
朋美はこの日もこう言った。
「雪も降るわよ」
「こうしてなのね」
「クリスマスも冬だから」
「降るってことね、雪が」
「そうよ、それで由美子は」
「持って来てるわ」
由美子はにこりと笑ってだ、朋美に答えた。
「義理も本命もね」
「私もよ」
朋美も友達ににこりと笑って返した。
「義理も本命もね」
「持って来たのね」
「どっちもね、じゃあね」
「ええ、今からね」
「皆で配りましょう」
「クラスの男の子達にね」
「義理チョコをね」
まさにそれをというのだ。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
二人で言ってだ、そのうえで。
クラスの他の女の子達と一緒に教壇のところに行ってだ、クラスにそろそろ集まりだしている男子達に言った。
「はい、今から配るわよ」
「いない人は後で来てね」
「バレンタインのチョコレートね」
「今から配るわ」
「義理チョコよ」
「有り難く受け取ってね」
こうかなり事務的に言うのだった、そして。
男連中も教壇の前に並んでだ、女の子達がそれぞれ出したチロルチョコやパラソルチョコ、一袋二九八円程で売っている袋入の小さなチョコ達からだった。
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