第一章
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ホワイト=バレンタイン
バレンタインは二月十四日だ、このことを知らない日本人はいない。
そして二月は日本では冬だ、
それでだ、松坂由美子は今クラスで中学三年からそしてこの八条高校でも一年二年と同じクラスの谷繁朋美にこう言った。
「バレンタインって寒いのよね」
「当たり前でしょ」
その由美子にだ、朋美はあっさりと返した。
「だって二月よ」
「二月の真ん中ね」
「雪だって降るでしょ」
天候によってはだ。
「それだったらよ」
「寒くて当然よね」
「今更何言ってるのよ」
幾分呆れた声でだ、朋美はまた由美子に言った。
「そもそも二月で寒いからね」
「チョコレートっていうのね」
「そうよ、溶けないし」
暑いと熱で溶ける、それがチョコレートだ。だから調理にも使えるのだ。
「しかもカロリー高いからエネルギー補給にもなるし」
「まさに冬はチョコレートね」
「そうよ、何言ってるのよ」
またこう言った朋美だった。その切れ長で細面、そして白く高い鼻という整った顔で由美子の丸い目と少し家鴨のそれを思わせる形の頬が程よく膨らんでいる白い顔を見て言った。二人共髪の毛は黒く長く伸ばしているものだ。ただし由美子はカチューシャを付けている。二人共同じ濃紺のブレザーに青いアスコットタイと白ブレザー、グレーを基調としたミニのスカートという制服を着ている。二人共同じ吹奏楽部に所属している。
「そう思ったわよ、実際」
「まあそれはね」
「あんたもそう思うでしょ」
「実際のところね、ただね」
「ただって?」
「寒いの苦手だから」
それでというのだ。
「もっとあったかい時にとかね」
「そんなこと言われてもね」
「仕方ないっていうのね」
「だって実際かどうか知らないけれど」
この前置きから言う朋美だった。
「バレンタインって聖バレンタインが殉教した日でしょ」
「そう言われてるわね」
「その日にどういう理屈かわからないけれど」
「好きな相手にチョコレートあげる日になったのね」
「告白してね」
「そうしたイベントの日になったわね」
「そうよ、義理チョコもあるけれど」
それでもだ、朋美は言った。今は二人でクラスの窓辺にいて話をしている。
「そうした日になったのよ」
「チョコレートをあげるのね」
「冬のね」
「とにかくバレンタイン監督がアメリカに帰った日じゃないわね」
「違うわよ」
朋美は由美子の今のジョークには即座に返した。
「二回帰ってるでしょ、監督」
「そうよね」
「そのバレンタインさんじゃなくて」
「キリスト教のバレンタインさんね」
「実際に殺されたかはわからないけれど」
まただった、朋美はこのことを由美子に注意書きの様に言った。
「その日
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