交節・紅と桜、蠍と斧
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
略組トップに君臨する筋力値を発揮して低空跳躍し、見事【ディオ・モルティーギ】の元へ辿り着いて見せた。
しかし赤い少女は焦燥することなく……寧ろ酷いまでに落ち着いた動作で、ゆっくりと“歩いて”距離を詰めてくる始末だ。
「うー……あっはぁっ!!」
滑空するような勢いは使わず、今度は地に足を付けてダッシュし、アマリは少女へ詰め寄っていく。
重くともお互いに迫っている為に、数秒で武器の持つ有効射程まで肉薄する。
そうして横に思い切り振りかぶって、轟音を立て振り切った。
瞬間……空気が、僅かながらに狂った。
「あっはぁぁっ!!」
「……お?」
何という怪我の功名―――――そこで足を滑らせ、横からの一撃は“縦からの”一撃へと変化した。
同時に……流れが、漂う空気の色が、僅かに変質する。
そして迷いなく力を込め続けるアマリの影響で、より斧は加速の一途をたどっていた。
予想外から繰り出される、肉ばかりか骨をも立つ重量たる一撃だ。
「あがあっ……!!」
「っはぁ!!」
読みが外れて空中へ飛んでしまったた少女は、次の回避行動を取れず『赤い光』と共に地に撃ちつけられ、バウンドして後方へ飛んでいく。
戸惑いなど全く見られない所作で、アマリは一回転の後追撃すべくと突撃する。
……だがやはり侮れず、少女は防御していた事に加え、一瞬で“攻”から“防”へ切り替えていたか、二回目のバウンドでバク宙しすぐさま正面を見据える。
HPは二割近くも減っていない。
だが反撃の糸口はつかめた。
アマリは己の内に湧いてきた高揚感を詰め込み、狂気と共にソードスキルを発動させるべく斧を振り上げた。
己の方へよって来た運を、逃す者など居はしない。
紅い少女の姿を確りと、目の前に納めて、決して目を逸らそうとはせずに。
猛獣の如き歩みは止まらない。
「キシィ?」
否……歩みは、唐突に止まった。
目の前の少女が浮かべている『狂気』の笑みによって。
「……え」
暴走列車よろしく猛進していたアマリの脚が、自然と止まってしまう。
「フフフフフフ……これはこれは、油断が過ぎましたねぇ……? キシシッ……?」
笑っている筈なのに、笑っていない。
そんな矛盾をはらんだ笑みは、次々様相を変えていく。
「あぁ……こんな所で可能性に出会えるとは、私はなんと幸運なのでしょう……!」
アイドルコンサートに出向いた、熱烈なファンの如く声高らかに、叫ぶ。
「先から感じてはいましたがこれほどとはっ………? どれだけ……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ