交節・紅と桜、蠍と斧
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冷えする様な声から一転、ひょうきんな声色で返してしまった理由は単純。
振り向き固定された視線の先に、またもその少女の姿が“無かった”からだ。
「見失いましたか? ほら、コッチですよ」
「……!」
声がする方向を向けど、やはり声の主の姿はかけらも見られない。
「仕方ありませんねぇ……ほらっ」
すると不意に、コンコンコン……と何処か馬鹿にされた調子で頭が叩かれ、アマリも思わず振り向いてみれば―――
「……!」
「ちゃお?」
驚くなかれ……その少女はあろう事か【ディオ・モルティーギ】の上に、余裕綽々と『腰かけて』いるではないか。
すぐさま強引に振り落とそうとするが、斧を振り切る前に紅い少女は飛び上がり、軽やかな所作で地面に着地する。
斧を上段に構えたアマリは今までとは一線を画す相手だからか、それとも単なる気まぐれか、攻撃ではなく言葉を口にした。
「お前、今私に触ったです?」
「えぇ?」
「お前、そこまで死にたいですか?」
「死にたいか、ですか。う〜〜〜ん……さぁ?」
怒りも無く、憎しみも存在せず、興味も浮かんではいない……純粋な狂気一色に染まるアマリの視線を受けても、少女は笑顔も変えず微動だにしない。
寧ろそれどころか心地良い、そよ風に等しいとばかりの態度。
痛快だとばかりに、愚かしいと肩をすくめ、両掌を上に向けおどけてみせていた。
何故だろうか……彼女は奇妙なまでに、楽しげで嬉しげにすら見える。
それは空間を燻らせる狂気が生み出した、一種の錯覚なのだろうか……。
「死にたいならぶっ殺してあげるですよ。《でぃーちゃん》なら苦しむ間無しで一撃で逝けるですから、怖いも痛いも無縁ですので大丈夫です」
「へぇ、一撃とは恐ろしい。まぁ、当てられればの話ですがねぇ♪」
とことん人をくった様な態度の少女へ、アマリは迷う事無く突貫。
大迫力の紫紺の刃が唸り、相手を脳天から断ち切らんと迫る。
圧迫感すら無視できるのか、スイッ……と軽く身を捩じって少女はごく普通に回避して見せた。
されど、その紙一重が落とし穴。
アマリの斧から三度衝撃波が発生し、あたり一面に濛々と小規模の砂嵐を発生させた。
「危ない危ない?」
……が、赤い光が瞬いたかと思えば、少女は依然として近距離に立っていた。
かなりの至近距離で受けたにもかかわらず、ダメージは皆無で吹き飛びすらしていない。
コレには流石のアマリも驚き、
「―――――ッ!!」
しかし空白は一瞬だった。
声にならない雄叫びを上げ、自らの剛腕を活かし恐るべき速度で横薙ぎに振るう。
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