交節・紅と桜、蠍と斧
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意味の分からない光景に、アマリも立ち止まってコテン、と小首を傾げる。
ならば回避したのか、と周りをそれとなく素早い動きで見渡すが、先の女性プレイヤーは夢幻の如く、影も形も存在していない。
「うーん……興奮し過ぎたですかねー?」
今まで体験した事のない現象のお陰か、それとも粗方モンスターを踏み潰してそこそこスッキリしたからか、空気こそ未だ淀んではいるものの、アマリの笑みも動作も戦闘前の物に戻っている。
おっかしいなー? と言わんばかりの動作で少しの間悩むも今はフォラスとの合流を優先すべきと考えたか、元気よく一歩踏み出して歩き出した。
「フフフ……挨拶無しから迷いなく切断とは……いやはや、如何にも物騒な方ですねぇ」
「はえ?」
その歩みはまたも、謎の声で止められる。
振り返り―――ざまに斧で一閃しながら後ろを向けば、そこには誰も居ない。
いや、厳密には居る……足元で屈みながら笑っている少女が。
血もかくやの真っ赤な髪を触覚の様なツインアップに纏めており、ローブを纏っているので体型などは知れないが、顔には[Ω]状のタトゥーが彫られている。
彼女もまたアマリに負けず劣らずの美少女であるのに、その刺青が何処か勿体ない。
「おやおや、本当に物騒極まりない?」
言いながら恐怖など一辺も無い、余りに無垢な笑みを少女は浮かべていた。
そこでアマリが斧を振り下ろさなかったのは……単純に見失っていたからだ。
単純な視界からだけではない。
先に居ないと称したのは、アマリにとっての[視界]から―――存在すらも目に入っていないからだ。
だからこそ、先程の声すら気の所為だと思い込み、再びアマリは歩き出す。
「あ、ちょっと待って頂けませんか?」
道にでも迷ったのか、赤色の少女はアマリへ向けて、肩でも叩いて呼びとめる気か手を伸ばした。
……手を伸ばしてしまった。
少女の方からすれば挨拶代わりでしかないだろう。
だが、アマリからしてみれば―――攻撃。
瞬間、噴き上がるは、今までのが児戯とすら思える “狂気” 。
先の振り返りざまを容易に超える、驚異的な破壊力と速度で徐に蹴りが繰り出され、重くそして鋭く空間を穿った。
完全に、相手の虚を突いた一撃であり、余りに……余りに“理不尽”な剛撃だった。
「お前、今何しようとしたですか?」
ゆっくり動かす時間も惜しいと、アマリはすぐさま視線の行く先を変える。
……しかし現実もまた理不尽であった。
見た目通りに、思う通りに動いてはくれなかった。
「―――はにゅ?」
底
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