交節・紅と桜、蠍と斧
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どれだけ、どれだけ、どれだけぇ……? 心地よいものをっ、味わえるのでしょうかあ……ぁっ?」
或いは、至高の美味を口にした美食家の如く、蕩ける。
「キ、シ―――――キシシッ! キシシシシシシシシシィ?」
最後に浮かべられたのは、いっぱいに見開かれ血走った目と、閉じたまま最高まで引き上げられる口角の齎す…………余りに濁った『狂気』だった。
「ア、マ、リさあああぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁん! 私は貴女の事を知っていましたっ? しかし予想の外は行かぬだろうと放っておいたのですっ! しかしながら……しかしながらしかしながらしかししかししかしぃっ? 見つめて置くべきでした、保持しておくべきでした、貴女はこれ程までにも美しいイイイイイィィッ!!」
赤く、紅く、緋く、朱い―――真っ赤な狂気がとめどなく彼女の身体からにじみ出ていき、この空間一体を覆っていく。
その狂気はあろう事か、『骨の身体を持った悪魔』の形すら取っていると錯覚するぐらい、いっそう濃く吹き出ている。
「ひ……!?」
尋常ではない執着と、尋常ではない狂嗤にさらされたアマリは―――思わず、一歩下がってしまった。
コレが彼女にとって初めての、退却のあかしだと知れば、どれほどの恐怖を叩きつけられているか分かるだろうか。
「アアァァァァマリさああああぁぁぁぁぁん!!! 愛死合いましょうううぅぅぅっ!!」
もう動けない、もう考えられない、もうなにも出来ない。
アマリはただ立ち尽くし、ただ見つめ続ける。
その深紅なる狂気の刃を目の前にし―――――
「ラアアアッ!!!」
「おっ!?」
「ふ、ぇ……?」
何時飛び出て来たのか、真正面から、包帯を巻いた腕が受け止めた。
鉄色の髪と暗銀のメッシュを持つその浅黒い肌の青年は、目の前の狂気を受けても平然と立っている。
更に……同時に彼からも噴き出す『刃物だらけの悪魔』をかたどった怒気が、諸共に打ち消していく。
「貴方と出会えるとはっ……キシィ、キシシシシシシシシィ!」
「黙れ、耳障りだ……!」
紅色と鉄色の濃度がより高くなり、ぶつかり合う所までを目撃し…………アマリの意識は其処で途絶える。
その後アマリの目が覚めたのは、自分のホ−ムのベッドの上で、フォラスやキリト達といった、彼女の仲間が心配そうに見つめる中で―――だったという。
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