交節・紅と桜、蠍と斧
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『ソードアート・オンライン』
発売前はVRGゲーム初のMMOであり、必ず金字塔を打ち立てると言われた期待作だった。
だが発売後は……一万人もの人間を電子の牢獄へ閉じ込め、理不尽なデスゲームと化した。
魔法の様にメニューからアイテムを取り出せたり、《ソードスキル》で剣術の素養のない物でも軽快に剣が扱えたり、人間も漏れなくポリゴン的で不自然な質感であったりと、やはりゲームという概念を打ち破れてはいない。
だがその一方で、本物の命が掛っているという異常事態、GMにより強制的に戻された嫌に現実的な容姿、何処かリアルな状況。
これらが、通常のゲームに付いて回る《遊び》を根こそぎ否定していた。
一応システムの観点からだけ語れば、PKそのものはペナルティがあるだけ。
だが―――デスゲームであるこの《ソードアート・オンライン》では、本物の命を奪いまた背負わせる、良心及び精神的なペナルティを否応なく乗せてくるのは、言うまでも無い。
そして殆どの人間が、何かしら異常をきたさない限り、いくら仮想とはいえど現実が掛っているならば……好んで手を血に染めたくは無かろう。
元より、それを思いつく人間など、常識で考えれば居よう筈も無い。
だからこそ―――――
「はー……」
「ウフフ……」
今この場で確かな『殺気』を湛え、デュエル申請もせず『直に』斬り合い、顔に笑みを浮かべる一人の少女と、無表情で斬りかかる少女は……酷く歪だった。
ギャラリーなど存在しない、命を掛けた異色の“PvP”。
一呼吸置き―――再び始まる。
「っはぁ!!」
当たりの空気を丸ごと震わせんばかりに、轟くは爆音。
「おぉ、怖い怖いっ?」
それは二度三度と断続的に鳴り響き、
「―――っはぁ!」
「フフフ?」
辺りの砂を分別も無く、尽く捲り上げていく。
斧を持つ少女も、スコーピオンを構える少女も、一見すれば互角の戦いを繰り広げているように見える―――が、頭上に表示されたHPは立った2割弱、されど2割弱、斧持ちの少女の方が減っている。
対する武器を揺らしながら、ステップを踏む少女は……まさかのHPバー“数mm”程度。
相手に比べれば、幾分か鼻歌まで行いながら遊ぶ余裕があり、明らかに格上なのが見て取れた。
傍から見れば凄惨な、一切合財善心をも付け入る隙のない、ただの『殺し合い』。
にも拘らず、斧の少女は何の感傷も無く得物を振りかざす。
スコーピオンの少女は顔に笑みを浮かべている。
どちらが上なのか、いうまでも無いこの状況。
なのに
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