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ゴルゴ13
PART 2 デューク東郷
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れると脳内神経が危険信号を発しているのだ。

「ゆっくりとだ……」

「はい……」

 彼と言葉を交わすだけで心臓発作が起きそうな気分ではあるが、そんな文句を言っている暇さえ与えられない。現王園は言われる通りにスピードを落としてポケットの中身が分かるようにして写真を取り出し、ゆっくりとゴルゴ13の元に手渡した。その写真に写っているのは今季使用されているNPB公式ボールだ。パッと見は普通のボールに見えるのだがこのボールには現王園しか知らない秘密があった。

「このボールは野球規則に違反する低反発統一球だな……」

 彼の口から恐るべき言葉が飛び出した。なんとNPBの幹部すら知らない公式球の秘密をミスターGは知っていたのだ。自らのホームラン記録を塗り替えられないために、ボール製造元の社長と密かに裏取引をして違反球を造らせていた。この事実は世界でも2人しか知らないトップシークレットの秘密だ。それを此方が口外するまでもなく、彼は平然とした表情で語った。『なんという男だ』としか答えが見つからない。しかし、この言葉を直接言えばあまりにも無礼であるので、ナイーブに包まざる終えない。

「どうしてそれを!」

「俺が何故、違反球の情報を知っているかは今回の仕事とは何の関係も無い。要件だけを話せ……」

「わ、分かりました。では手短にお話しさせて頂きます。実は今回貴方には、そのボールを打ち落としてほしいのです。しかもボールがスタンドに入る前……憎きアレックスがホームラン性の当たりを放った瞬間に、ボールを球場内に打ち落として頂きたい。スタンドにさえ入らなければホームランにはなりません!」

「…………………………」

「ただでさえホームランの打球スピードは160キロを超えているのに、指定する場所には浜風が舞っています。しかも球場には、アレックスの記録更新を見届けようとする大勢の観客がいることでしょう。その中でボールを破壊せずに無傷のまま球場内に撃ち落す……こんな無謀に等しい条件、並大抵のスナイパーにはとても不可能でしょう。ですが、超A級スナイパーの貴方になら不可能を可能にしてくれるはず!」

 現王園が言おうとしているのはホームランの狙撃。しかし、明日の試合中にアレックスが必ずしもホームランを打つという保証は何一つ無い。不確定要素があまりにも多過ぎる条件下でも、ミスターGは依頼を引き受けてくれるのか。緊張が走る。張り詰めた空気の中で現王園は額から汗を流していた。

「分かった。引き受けよう……」

「おおっ。ありがとうございます!」

「入金を確認次第、仕事を始める……」

 ミスターGはそう言うと部屋の中から出て行った。


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