第一部
第二章 〜幽州戦記〜
九 〜軍師たち〜
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うが?」
「ですが、白波賊の事は全く抜けておりました。……歳三様が仰せの通り、可能性は排除すべきではない。軍略を練る上での基本中の基本を、私は見落としていました。軍師として、恥ずべき事です」
「気に病む事はないぞ、稟。私とて、お前達の提言があればこそ、その可能性に至ったまでだ」
「……お優しいのですね、歳三様は」
「フッ、私がか? これでも、鬼呼ばわりされていたのだぞ?」
稟は、激しく頭を振る。
「いいえ! それは、本当の歳三様をご存じない輩だからでしょう。……私は、歳三様にお仕えした事が誤りでなかったと、日々思っております」
「曹操に仕えた方が良かった、そう思うやも知れぬぞ?」
「いえ。曹操殿がどのような御仁であろうとも、歳三様以外に私の主は、あり得ません」
「稟」
「……お慕い申し上げております、歳三様。願わくば、私が殻を破る一助に、なって下さいませ」
稟の眼に、迷いはないようだ。
「言っている意味は、勿論わかっているのだろうな?」
「はい」
「……わかった。ならば、参れ」
「……はい」
稟の手を取り、寝台へと導いた。
……が、布団が何故か、丸まっている。
そして、何かが蠢いている。
「……何者だ?」
まさか、刺客か……?
だが、現れたのは、殺気とは縁遠い存在。
「やれやれ。やっと気づいていただけましたねー」
「ふ、風?」
「稟ちゃんの愛の告白、全て聞かせていただいたのですよ」
しかし、全く気配を感じさせぬとは。
私が衰えた、とは……思いたくないな。
「い、一体何ですか、風? 邪魔をするつもりですか?」
「いえいえー、稟ちゃんは本懐を遂げられるのですから。それよりもお兄さん、風は言いましたよね? しつこい、と」
「……覚えておるが」
「なら、愛紗ちゃんと星ちゃんだけでなく、稟ちゃんにも寵愛を賜ろうとするのに、何故風は除け者なのですか?」
「何を言っているのです、風?」
「何度も言いますけど、風はこう見えても大人なのですよ? もし、子供扱いされているのなら不当なのです」
「風。私は、そのようなつもりはない。だが、今この場でお前がここにいる、その説明にはなっていないぞ」
「そうでしょうかー? 風も、お兄さんの事が好きなのです。それでは理由にならないのですか?」
ジッと、私を見つめる風。
いつも眠たげな眼が、今日はしっかりと私を射竦めている。
「……風の気持ちは、相わかった。だが、ここまで勇気を振り絞って告白した、稟はどうなる?」
「ですからー。稟ちゃんと一緒に、でいいかと」
「風! あなた、何という事を」
「稟ちゃん、風も真剣なのですよ。もう、待てないのです」
……同時に言い寄られた事が、昔なかった訳で
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