第一部
第二章 〜幽州戦記〜
九 〜軍師たち〜
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らば何故、黄巾党との戦いに出てこないのだ?」
「言ったでしょ、バカだって。バカのくせに、権勢欲だけは強いのよ、あいつらは」
やれやれ、相当な言われようだが。
しかし、賈駆の性格は別として、彼女程の軍師が、言われもなく他者を誹謗中傷するとも思えぬ。
稟と風の分析も合わせると、愚物という評価は、正しいのだろう。
「それで、どこと戦うのだ? 我が武、見せてやるぞ!」
「落ち着くのだ、華雄」
「張飛の言う通りや。ええか、ウチらは合同で初めてさっき言った連中と戦えるんやで?」
「……お前、そのまま戦えば、死ぬ」
「ぐっ。……わかっている、だから鍛え直しているところだ、自分自身をな」
そんなやりとりを聞きながら、私は地図に見入っていた。
「ご主人様? 何か、気がかりでも?」
「……うむ。ここにいる黄巾党だが」
と、地図の一点を示した。
「そこは、白波賊が本拠としていますねー」
「白波賊?」
「ええ。黄巾党の一派なのですが、他の黄巾党とはあまり連携していないようです。規模も、二万程度とか」
「だから、要衝を狙う、という戦略からすれば外れているのよ」
「しかし、二万と言えども大軍。万が一、我が軍の背後を突かれたら危ういのではないか?」
「では、歳三様は、白波賊が他の黄巾党と連携する可能性がある、と?」
「そうだ。今までになかったから、と可能性を排除するのは危険であろう。要衝を落とすのはもちろん重要だが、戦力がまとまれば多様な戦術が展開可能となろう。それよりは、各個撃破を目指すべき、私はそう考えるが」
「考え過ぎって気もするけど……」
賈駆は、やや不服そうに言う。
軍師として、様々な検討を重ねた結果に横やりを入れられたのだから、当然の反応ではあるのだが。
「ですが、お兄さんの言う事にも一理あると思うのですよ」
「ええ、可能性は排除すべきではない……。歳三様の、仰る通りかと」
「では、それも含めてもう暫く検討する、という事にしましょう。丁原おじ様にも、そう伝えておきます」
董卓がそう締めくくり、軍議は終わった。
「あ、土方はん。ちょっとええか?」
と、張遼が声をかけてきた。
「どうした?」
「アンタに、ちょっと聞きたい事があるんや。一緒に来てくれへんか?」
「構わんが。すぐにか?」
「手間は取らせへんって。な?」
「わかった。では、参ろう」
ふと、視線を感じた。
……稟か。
「稟。どうかしたのか?」
「……あ、い、いえっ! 何でもありません」
妙に慌てているようだが。
「話があるのなら後で聞こう。済まんな」
「い、いえ……」
「土方はん。行くで?」
張遼が、私の腕を引っ張る。
その弾みで……胸に、
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