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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十話 ハイネセン占領
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は新たな御荷物になりかねぬという事か」
「はい、その可能性は無視出来ません。株を所有した企業はいずれも帝国、反乱軍、フェザーンで経済、社会、軍事面において大きな影響力を持つ存在です。そういう意味でも門閥貴族に似ているでしょう。ブラッケ、リヒターも危惧しております。官僚達の天下り先になりかねないと」

思わず息を吐いた。官僚達の天下り先か、そうなれば益々厄介な事になるだろう。ブラッケ、リヒターが危惧しているという事はもう既に官僚達の間でそういう話が出ているのかもしれない。あの連中、利権には鼻が利く。涎を垂らしているかもしれん。一難去ってまた一難か、厄介事は無くならんな。
「帝国のものは放出した方が良かろう。しかしフェザーン、反乱軍のものは如何かな?」
ゲルラッハ子爵が“自分もそれを考えています”と頷いた。

帝国はフェザーンに遷都する。遷都による混乱を出来るだけ少なくするにはフェザーンで強い影響力を持つ企業を帝国の支配下に置いていた方が都合は良い。そして反乱軍、こちらも妙な動きをさせぬためには企業を支配下に置いた方が良いだろう。だが両者とも反発するのは間違いない、そして御荷物か……。将来的に統一する事を考えると……。

「ふむ、ヴァレンシュタインに訊いてみるか?」
私が確認するとゲルラッハ子爵が“はい”と頷いた。やはり最後はそこに落ち着くか。
「不便な事だ。そろそろあれをこちらに引き入れねばなるまい。何時までも軍人のままでは困る」
ゲルラッハ子爵が“そうですな”と言って笑みを浮かべた。この男は財務尚書止まりだな。宰相、国務尚書にはなれん。これからの宰相、国務尚書は宇宙全体を見渡しながら帝国の舵取りをしなければならん。この男にとっては重荷であろう、幸いなのは本人もそれを理解している事だ。

「もう直ぐそれも叶いましょう。反乱軍の宇宙艦隊は降伏しました。今頃はメルカッツ副司令長官がハイネセンを攻略している筈です」
「うむ」
年内には戻ってくるだろう。直ぐにとはいかんであろうがフェザーン遷都が一つの区切りにはなる。もっとも引き抜きには軍が反対するであろうな……。頭の痛い事だ。

執務室のドアを控えめに叩く音がした。ドアが開きワイツ補佐官が顔を出した。表情に多少興奮の色が有る。
「如何した?」
「エーレンベルク軍務尚書、シュタインホフ統帥本部長、両閣下がお見えです。至急閣下にお会いしたいと」
あの二人が直接来たという事は私に報告しそのまま陛下への奏上という事か。陛下もお喜びになるであろうな。ゲルラッハ子爵の笑みが大きくなっている。考える事は皆同じようだ。



帝国暦 490年 4月 28日   ハイネセン     エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「ジーク・ライヒ!」
「ジーク・カイザー・フリードリヒ!
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