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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十九話 アルレスハイム星域の会戦
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テンベルク伯爵にとってもフォルゲン伯爵にとっても望ましい事ではなかった。
だがこれが裏目に出た。フォルゲン伯爵にカール・マチアスの件で憲兵隊の調査が入った。その後ハルテンベルク伯爵にも捜査が入り、ハルテンベルク伯爵がサイオキシン麻薬の密売組織の存在を知りながら放置した事が明らかになった。ハルテンベルク伯爵は取調べ中に自殺、一説には内務省の人間に謀殺されたといわれた。
この一件で内務省は混乱し失墜した。あとは軍の独壇場だった。あまりの圧勝にサイオキシン麻薬密売事件は軍の自作自演ではないかと噂が流れたほどだった。
俺の昇進が決まったのはこの直後だった。オーディンの一件が無ければ昇進は無かったろう。第359遊撃部隊の陣容も決まった。司令官にメルカッツ中将、参謀長にシュターデン准将、副参謀長にクレメンツ大佐、参謀にベルゲングリューン、ビューロー少佐。なかなか豪華な面子で正直びっくりした。
俺は艦隊勤務は初めてだし、参謀任務も初めてで判らない事ばかりだったがクレメンツ大佐が親切に教えてくれた。大佐には感謝している。シュターデンは嫌味しか言わないし、ベルゲングリューン、ビューローは俺とあまり話そうとしない。大佐が居なかったらノイローゼになっていただろう。ケスラーに愚痴をいったら、お前はミュッケンベルガーの秘蔵っ子だから敬遠されているんだとからかわれた。冗談だと思いたい。
「先行している哨戒艦より連絡。敵艦隊発見、数およそ9,000隻、イゼルローン回廊方面に向かって移動中とのことです」
通信士からの報告が艦内の空気を緊張させる。やっぱりこうなるのか……。
司令部要員が全員司令官の近くに集まる。みな緊張した表情だ。敵の兵力がこちらの1.5倍だ、無理も無い。
「9,000隻ですか。少々荷が重いですな」
「だからと言って何もせず、引くわけにもいくまい」
クレメンツ大佐とシュターデン准将が話している。確かにそうだ。敵が2倍、3倍というなら撤退できる。しかし1.5倍というのは中途半端だ。不利では有るがやりようによっては勝てない相手ではない。特にメルカッツは上層部から評価されている分、敬遠されている節がある。何もせずに撤退すればさぞかし中傷の的となるだろう。
「奇襲しか有るまい。幸い小惑星帯がある。そこに艦隊を隠し迎え撃つ」
「確かにそれしかないでしょう」
「それなら敵の横腹を着く事が出来る」
「……兵を分けませんか」
「!! 何を言っているのだ、卿は」
「兵を二分してはどうかと提案しています」
周りが皆、俺を見詰める、まるで気が狂ったかというように。
「話にならん。少佐、口を閉じたまえ」
「待て。少佐、何故兵を分けるのかね」
俺を叱責するシュターデンを止めメルカッツは俺の発言を促した。
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