風吹きて月は輝き
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謁見に臨んでいたのは二人と一人。
黒髪を流し、官位に見合った衣服を纏い、些か堅いがなるほどと納得せざると得ない気を発している春蘭と。
わさわさと金髪を棚引かせ、普段通りの軍師服を着こなし、気付かれにくいが緊張からかいつもより緩さの薄くなっている風。
そして最後の一人は侍女服を着た少女……月であった。
華琳が行っている三点同時戦略は、益州、西涼、揚州に向けてであるが、他の二つに比べて西涼は少し毛色が違う。
まず、益州の太守劉璋は、内部でのいざこざを平定したとは言っても、都に報告すらしていない太守である。当然、帝に認可されていない。皇室の血とはいえ、太守が変わったのなら報告くらいするのが義務であろう。漢の土地として認知されている以上は、益州は天たる帝のモノであり、治めよと命じるのも帝でなければならない。
まさに群雄割拠の行いであり、秋斗が帝への報告を題材として謁見を行ったのもその点を突いているのだ。
後継ではあっても正式な太守ではない。しかし太守として相応しいとは思っている。だからそれを証明しろ。秋斗と詠が用いた論は、こういうこと。
話が僅かにズレたが、以上の点から益州は“まだ”漢の忠臣とは言えず、正式な官位持ちの使者を出すに値しないと見る事も出来る。それを劉璋も分かっている為、血統を理由にして取り合わない事を選ぶはずだったのだが……。
次に揚州。
知られている通りに孫策が取り返した土地である。こちらも劉璋と同じように、人々に太守として認知されてはいるが、帝の許可は得ていない。桃香のように正式な書簡で任命されたこともない。
さらには、劉表暗殺の疑惑が仮釈放のようなカタチでうやむやにされており、漢の臣下達にとっては心象も悪い。故に、正式な官位持ちの使者を出すことなどしなくともよい。
こちらに向かったのは一癖も二癖もある三人だったが、正式な位に付いているモノは皆無のいわば華琳の個人的な部下であり、その程度の扱いしかしないと面に出しているのだ。
最後に西涼。
他の二つと全く違う点は、西涼はいくつもの豪族や有力者の集合体からなる連合統治体制であり、あくまでその代表が馬一族であること。
連合の代表者たる馬騰は、長きに渡る異民族からの防衛を一手に担い、軍事力によって皆に認められた王。
その功績が評価され、漢は馬騰に官位を与えた。北西の大地を守り続ける誇り高き守護者に相応しいモノを。
で、あるからして、形式を重んじるのならば……そして華琳があくまで漢の臣としての立場を取っている以上、馬騰の持つ官位を無視することは出来ない。
官位……分かり易く言えば栄光と力。
何かを為したモノが与えられる名誉であり、誇りであり……他者とそのモノの身分を明確にさせる記号でもある。
身分という
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