風吹きて月は輝き
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纏める王である馬騰に真正面から向かう彼女を、恐ろしく感じていた。
其処にはどれほどの憎しみがあるのかと。
其処にはどれだけの怒りがあるのかと。
悲痛に眉を寄せた翠が馬騰を見つめる。
――なんか言ってよ。あたし達は……ホントに……
微笑みに込められた圧力が、あの連合に参加していた翠の心を深く抉り抜く。被害者の言葉は弾劾になる。彼女は参加していたからこそ、月の言葉に痛みを覚えた。
「あらら、華琳様のせっかちが移っちゃったようですね。まあ、お兄さんの悪戯心ともいえますけど」
「あ……ごめんなさい」
「いえいえ。でも……ふふっ、覇王の義妹らしくていいと思いますよー」
会話の隙間を利用しない風でもなく、さらりと爆弾発言を投下した。
理解をする為に、そして状況を把握する為に、さらには此れからのことも考える為に脳髄を回させ、混乱した頭に対して次々と情報を投げ与える。
戦での常道をそのまま情報戦に持ち込んだようなやり方に、西涼の者達では誰も思考が追いつかない。
「……義妹、だと?」
「はいー。彼女は我が主が才覚を評価し、曹家の養女となることが決まっておりまして……。
我らが掲げるのは、“才あれば用いる”、たったその一つなのですから」
びしり、と指を立てた。皆に視線が風に集まる。
のほほんとした声を紡いで、彼女はゆるりと笑う。
「では、馬騰様。事実確認は出来たので最後に一つ。
そですねー……未だに漢の臣としての姿を示したいのなら、西涼連合の解体と再統治を行った上で陛下の御元に参上するのがよいかと。どちらにしても董卓の件で嘘をついていたと分かったら官位は剥奪らしいので、それくらいしてやっと陛下の疑心も憂いも張れるのではないでしょうかー」
絶句。
馬騰も、馬超も、馬岱も、西涼連合の有力者たちも、皆が一様に言葉を失う。風は最後に、西涼を治める者達にとって最悪の案を口にする。
連合の解体と再統治命令。西涼内部を群雄割拠の様相にすると、風はそう言った。
今回のことで馬騰の求心力は確実に下がった。この場に居合わせた西涼連合の者達は、隣人を売りに出した彼女に疑心を持ってしまう。
我らが董卓と同じ立場になったのなら攻めるのだろう。
自分達が危うくなったら義よりも自己の安定を求めるに違いない。
連合とは名ばかり、統括になっている馬騰の独断で、全てを決めさせるわけにはいかない。
そう思うモノは少なからずいるのだ。
「陛下から直々のご命令というわけではございません。あくまで我が主からの提案ですのであしからずー。
誰が漢の臣として相応しいのかを示すよい機会でもありますし、戦上手なだけではこの乱世が終わった時に国をよくするには足りえない。これは西涼
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