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乱世の確率事象改変
風吹きて月は輝き
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い。
 涼しげに、呆れたように、風はため息を吐いた。

「さて……風の発言を否定しないということは、もう確定でいいですねー。
 臣下の皆さまからも反論があれば受け付けますがー?」

 しん、と静まり返った場からは言の葉が飛ばない。苦く唇を噛みしめる馬騰や翠。暗い顔をして俯く蒲公英は震えていた。他の者達――西涼連合でも発言力が高い者達も怪訝な表情を隠せない。
 楔は強く、深く差すべし。一寸聞いては見た者の反論が上がる前に、風はにやりと笑って、彼女達の生き方を全否定する言の葉を紡ぐ。

「西涼連合は偽臣の集い、そして漢の敵。それでいいかと……風は聞いているのですが?」
「っ……あまり調子に乗るなよ、小娘。黙って聞いていれば自分達に都合のいいようにぺらぺらとよく口が回るもんだ」
「おお、やっと言い訳が始まるんですねー、分かります」

 おどけた様子で肩を竦めた風は、クスクス笑いの挑発を止める事なく。
 怒りを静かに波立たせて、馬騰は声を荒げずに玉座から彼女を見下した。
 ただ……口を開こうとした馬騰の視線の端で……ゆるりと一礼をするモノが、一人。

 彼女はずっと、何を喰らっていたか。
 彼女はずっと、誰を見て来たか。
 彼女は……黒を喰らっていたが故に、人の心を捻じ曲げる。

「……馬騰様は、これ以上何をおっしゃるのでしょうか?」

 たおやかな声はよく耳に響く。儚げな空気は見る者を魅了してやまないが、それでも纏う空気は……間違いなく王のモノ。

「曹孟徳に対して、お前達が言うな、とあなた方がおっしゃるのなら……地獄と絶望を知らない、無責任な傍観からの意見ではないでしょうか。
 貴女達は“私達”を攻めた。泣いた人が居ます。苦しんだ人が居ます。絶望した人が居ます。死んだ人が居ます。その事実は変わらない。
 陛下は……泣いてましたよ? 苦しんでましたよ? 絶望してましたよ? 人の死に嘆かれてましたよ? それなのに未だ嘘を吐き、自分達の手で壊した漢の忠臣と……そうおっしゃるのですか?」

 感情と理。
 誰よりも近くで見てきた彼女の言葉は説得力を持っていた。特に馬騰の心を揺さぶる。

「“悪逆の佞臣”は貴女のことを責めてなんていませんでした。ただ……陛下が救われるのならそれでよかった。
 だから今の貴女を責める事もしないと思いますが……陛下を苦しめるというのなら、やはり剣を取り戦おうとしたでしょう」

 ただの侍女にしか見えない少女の瞳には、昏さの一つも見当たらない。普通の少女であるならば怒りや憎しみを込めた眼で見るのだろう。しかし月は相手に向ける負の感情を持つ事をしない。故に……室内に居る人々は、勝手に彼女の内心を予測して恐れ慄く。
 ただの普通の少女に見えるからこそ……歴戦の武人であり、一州を
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