風吹きて月は輝き
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ない。
「ふふ……嘘つき」
ぽつりと、風が零した。にやりと引き裂いた口から断罪の言葉を。
銀月の少女を姉と慕う少女の為にと、風は言葉を並べ始める……自分達のことは棚に上げて。それが出来る図太さを持たなければ、軍師になどなれない。
「漢の忠臣、聞いて呆れるのですよ。その程度で漢の臣? 笑わせないでくださいねー?
知っていて見殺した貴女は大罪人です。どちらが正義かを知っていた癖に、何かと理由を付けて董卓に味方することを拒んだのは、他の諸侯から狙われるのを恐れ、自分が手柄を上げる機会を虎視眈々と狙っていたからではー?
我が軍の全ての軍師の見解をお伝えしておきますとー、董卓に勝ちの目はありましたよ? あなたが真実を暴露すれば、味方に付く諸侯も居たはずです。例えば劉備、例えば公孫賛……少なくともこの二つの勢力は味方に引き込めたと思います。
ですが、あなたはそれをしなかった。どうして、手を拱いて見ていたのか。董卓は殺して、袁家討伐には参加しないのも忠臣と言うならおかしいですね。病を言い訳にするのはやめてくださいよー? なにせ、董卓を殺す為に娘を送り込むことは出来たんですから」
普段の風としては有り得ないくらいの言葉を並べ、思考を挟む隙を与えない。
全て真実。全てが事実。証人が皇帝陛下のお墨付きである以上、馬騰達に言い訳は許されない。
董卓が勝つ確率は存在したはずなのだ。すべては有り得ないもしもの話……ではあっても、手を貸さなかったモノが手を貸せば、何がしかの効果は得られたであろう。
使うモノを全て使わず、自分に嘘をついてまで――義や忠を蔑ろにしてまで得たモノは……何であったのか。
「もう一度聞きましょう。今度は質問を変えて。
貴女は……“誰の味方ですか”?」
しん――――と部屋に静寂が行き渡る。答えを返せるのは一人だけ。固唾を飲み込んで見守る臣下達の視線がひどく痛かった。
――陛下の味方だと答えても、返されるのは従えという一言だろう。
この論はおれの行く道を全て封殺している。董卓が生きていた以上、おれにはもう、逃げ場が無い。
「おー、お答え辛いご様子。やはり漢の臣というのは、嘘っぱちですかー」
「おいっ、黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 母様はなぁ! 先帝陛下に賜った西涼の守護をずっと担ってきたんだ! この荒くれもんだらけの大地を纏めて来たんだ! だってのに漢の臣じゃないなんて、そんなこと言うなぁっ!」
激発。
少し太い眉を跳ね上げて出た声が風に届く。少しだけため息を吐いた風は、しょうこともなしと首を振った。
「外敵から大陸を守るのが大切、と。それほど大切な任を放棄してまで董卓を討とうと挙ったあなた方は、やはり漢の忠臣ではないのでは? 後継者である馬超
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