風吹きて月は輝き
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文は続く。耳をふさぎたくなるような事が、きっとこの先に語られると、馬騰は歯をギシリと噛みしめた。
「ただ……其処でふと思ったのだ。
西涼を治めていた馬騰殿は……何故に連合軍に参加したのかと。隣の涼州を治めていた董卓のことは知らなかったのかと。
尋ねてみた所、陛下は、憂いていた。何故か。考えたくなかったのだよ、馬騰殿。
漢の忠臣である西涼の英雄が……隣人であり、皇帝陛下に唯一絶対の忠誠心を示した英雄を殺しに来たなどという、そんな哀しい事実を」
「そんなことないっ!」
「はいー、というわけで……」
春蘭が話していた途中で、翠が堪らず声を上げた……にも関わらず、風はのんびりと声を重ねる。
困惑が溢れた室内で、その声は異質に過ぎた。翠が声を荒げたことを上手く利用した。
口に手を当ててクスクスと、指を一本立てて妖艶に。間のずらし方は曹操軍でも随一。ゆるゆると巻き込まれながらも誘導するような黒や、わざと乗ってみせて遊ぶような華琳以外に彼女の敵はいない。
「風達は事実確認の使者としても此処に参りました次第にー。
馬騰様は董卓の真実を知っていたのかどうか……そして知っていたのなら何故、連合側に参加したのか。外敵の侵略を防ぐ為に交流はあったはずですし、董卓の情報が上手く隠されていたとは言っても、国の主が隣の太守と面識がない、もしくは情報さえ知り得ないなんて……有り得ませんよね。董卓は黄巾の乱にも参加し勇名を得ておりましたしー。
こちらが嘘をついている、ということはありませんのであしからず。何故なら、侍女として連れてきたこの子は天水出身でして、なんと、英雄董卓の侍女として仕えていたのですよー」
語られる前に釘を差し、此処で月の存在を明かすことによって反論の多くを封じ込めた。
話の主導権は既に風が持っている。
此れは馬騰と風の一騎打ち。返答を誤れば損害を受ける……戦そのモノ。
「その辺りはどうなんでしょうかー?
馬騰様の娘さん……馬超さんはどう思うのですか? というよりも……貴女はこの子を知っていますかー?」
「……見た事、ないよ。ってか侍女の顔なんか知るはずないだろっ!」
「では姪の……馬岱ちゃんは?」
食って掛かる翠の言葉を気にも留めずに、風は馬岱――蒲公英に話を振った。
ぶんぶんと首を横に振る彼女も知らないようで、風はにやりと意地悪く笑った。
「では馬騰様はー?」
馬騰は風と目を合わせず、ワインレッドをじっと見つめた。微笑みは穏やか。それは間違いなく……昔見たことのある少女となんら変わらぬモノ。
部下と家族の手前で、明かしてもいいものか。考えずとも、一族を纏める王ならば答えは決まっている。
「……知らんな、そんな小娘。どうせそこいらの娘を見繕ってきた
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