アザーワールド
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家族や友人、仲間に故郷を失う喪失感を味わっているから、彼が恐れてしまう理由はわかるんだ。でもジャンゴさんは、自分の力で前に踏み出す勇気は最初から持っている。恐れていても、いつか未来に歩き出す意思は抱いている。ただ、今はもう少し心を休めたいだけなんだよ。……サバタさん達に支えられてた頃の私のように」
「……そうか。思い返せばジャンゴも短期間の内に多くの喪失を味わった。それから心の傷を癒す間もなく、イストラカン、サン・ミゲル、楽園で過酷な運命と戦った。この2年間はある程度落ち着いているから、ジャンゴにはしばらくの間、戦いよりも人や仲間とのふれ合いを優先してもらうべきだろうか?」
「それが良いよ。という訳で………おてんこさま?」
「ん?」
何やら嫌な予感がしたおてんこは、冷や汗のようなものを流しながらシャロンの眼を見つめる。彼女は……やたら不敵な笑みを浮かんでいた。
「しばらくクロちゃんに遊ばれてきなさい!」
「な!? ま、待て! まさか!?」
「いっくよ〜スミレちゃん! 太陽玉〜ッ!!」
「ノォォォオオオオオオ!!!!!!!??????」
茎のような部分を掴まれたおてんこは野球選手のごとく綺麗なサイドスローでシャロンに投げられ、たまらず絶叫する。その先から「おっけ〜!」と柔らかい声が聞こえ、直後に黒い小さな影がおてんこに飛びついてきた。何を隠そう、その影こそクロであり、シャロンに返事したのは可憐な少女スミレである。
「ニャ〜♪」
「あ、こら! 私は毛糸玉ではないぞ!? 転がすな!? 抱き着くな!? 引っかくな!? うがぁあああああ!!!!????」
「わぁ〜クロちゃん、楽しそ〜」
ちなみに2年経っているので、スミレもちゃんと成長している事は一応付け足しておく。性格は純粋なままだが、知識面はシャロンとザジ、運動面はリタ、空いた時間にレディからイロイロ教わっているため、巷では何気にサン・ミゲル期待の星とまで呼ばれている才女だ。
「教育者を見てると、なぜか将来が不安になるぜ」とはキッドの弁だが、その言葉を発した数分後、暗い目をしてブツブツ謝罪を繰り返す彼の姿が目撃された。シャイアンが言うには「女の怒りは恐ろしい」とだけ……。彼の身に何が起きたのかは、神のみぞ知る。
「太陽の使者も猫が相手だと形無しやな」
「あれ、ザジさん? レディさんに報告はもうしたの?」
「おかげさまでな。たんまり入った報酬は後で渡すとして……ジャンゴの奴はホームに帰って来とるんか?」
「ついさっき戻ってきたところだよ。それで用事は――――ッ!?」
突如、サン・ミゲル全体に地震が発生し、皆が何かに掴まったりしゃがんだりして態勢を整える。あまりの激しさで地面に亀裂が走ったり、物が崩れ落ちたりす
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