第十六章 ド・オルニエールの安穏
第五話 ド・オルニエール
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ソレは炎を使わない特殊な剣を打つために特化された―――魔剣を造る為の炉であった。
地脈から汲み上げた魔力を用いて剣を鍛え、魔力を宿した魔剣を生み出すその炉は、何処にでも造れるようなものではなかった。様々な制約があるが、最も重要な点は、土地である。炎を用いず魔力により剣を鍛えるその炉に必要な魔力は尋常ではなく、一級品の霊地である筈の冬木であっても辛うじて使えるといった所であった。
しかしこのド・オルニエールの土地は凛が求めたように、霊地としては別格。凛が管理していた冬木と比べても段違いであった。
凛曰く、このレベルの土地は日本―――いや、地球では有り得ないとの事であった。
その言葉通り、炉が完成し、早速剣を打ってみると、冬木にある炉で打った剣とは桁違いの剣が生まれた。
試しに打っただけの、単に魔力が込められただけの剣であるにも関わらず、出来上がった剣は、宝具は言い過ぎにしても、それに迫る程の力を秘めていた。
ただ試しに打っただけの剣がそれである。
故に士郎は、それ以降炉を使用してはいなかった。
余りにも危険であるからだ。下手をすれば、劣化版宝具と言える武器が溢れかえってしまう。
自分の手には余る。
だからこそそう判断したのだ。しかし、士郎は不安を感じていた。何故ならば、炉を造ろうと言いだしたのは、士郎ではなく凛であったからだ。今思えば最初からおかしかった。最初から凛は急ぐように霊地を探していた。良い土地を求めるのは魔術師としては何らおかしくはない。土地の恩恵は魔術師にとっては死活問題だからだ。しかし、魔剣を生み出す為のこの特別な炉は、一度の使用でも莫大な魔力を消費する。その負担は、土地の管理者である魔術師にもかなりの負担を強いる。実際、以前冬木で凛に無断で炉を使用した際、管理者である凛は会うなりいきなりガトリングの如き勢いでガンドを叩き込んできたほどの怒りを見せたぐらいだ。
なのに、ここにきて凛は主導して炉を造り始めた。それも、冬木にある炉よりも更に出力が高いものを。それだけ負担が大きくなるというにも関わらず。
まるで、これから現れるだろう、脅威に対抗するために―――。
「―――あれから鍛っていないようね」
「凛、か」
唐突に掛けられた声に、士郎は驚いた様子もなく応える。
凛が地下室に入った瞬間には気付いていたからだ。しかし、これは士郎が格別気配に鋭いという訳ではなかった。凛が気配を殺していなかったのも理由ではあるが、今回はそれ以上に別の理由があった。
「こんな夜更けにどうしたと問いたいが―――それよりもその手に持っているモノは何だ?」
「あら、気付いちゃった?」
おどけたような声で笑う凛は、肩に担ぐように抱えていたモノを地下室の片隅に置かれたテ
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